「人の負の感情を爆発させる映画」青くて痛くて脆い orafuさんの映画レビュー(感想・評価)
人の負の感情を爆発させる映画
私は、すごく主人公に共感できたので、かなり刺さりました。なんとなくですが、この映画はストーリーというより、メッセージ性を強く意識して作られたのかなと感じました。
それまで、自分が傷つきたくないから人と距離を取って生きていた楓が、今まで散々痛いやつだとバカにしていた秋好にその生き方を肯定されることで徐々に心を開いていく。しかし、その秋好が楓と共にふたりで作った秘密結社モアイはだんだんと大きくなり2人だけのものではなくなっていき、秋好も楓がある意味憧れていた、理想を追い求める姿ではなくなっていく。そして、楓は秋好に対して、憎しみや怒りといった感情を持つようになる。
その心情の流れも手に取るように理解できました。自分は1番の親友だ、と思っていた友達が、急に割り込んできた他の人と仲良くなっていったら、嫉妬や疎外感を感じますし、それはほとんどの人が身に覚えのあることだと思います。そういう、ほとんどの人間が抱えているけども、プライドを守るために隠し続けている負の感情を、この映画はテーマにしているので、なかなかグサッときます。
俳優陣の演技も素晴らしかったです。特に吉沢亮さんは、演技力の高さを見せつけられた感じですね。これまで彼が演じてきた、「ぼくは麻里のなか」や「リバーズエッジ 」などでの少しダサかったり、闇を抱えていたりする役の経験が最大限に活かされていたと思います。歩き方や走り方などのふとした仕草をとっても、吉沢亮を感じさせない演技は圧巻でした。彼はブレイク前にダークな役はたくさん演じていたといえど、やはりキングダムやなつぞらからのギャップが凄いですね。改めて演技の振り幅に驚きます。
杉咲花さんやその他の脇を固める俳優さん達もとてもリアルに演じていて良かったです。森七菜さんと光石研さんのシーンはよく分からない涙が溢れてきました。森さんは今後の活躍も楽しみです。
この映画はきっと、主人公の心情を理解できるかで評価が分かれるんでしょうけど、私は完全に楓くん側の人間なので、この映画をつまらないと感じる人とはちょっと友達になれないかもしれないです(笑)またもう一度、もっと大人になってからも観てみたいと思える作品でした。