「近代化のなかで日本人が失ってしまった「神」との関わり方をみる」アイヌモシリ h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
近代化のなかで日本人が失ってしまった「神」との関わり方をみる
同化政策の過程で失われつつあるアイヌの誇りと文化のいまの姿を、ひとりの少年の視点で描くドキュメンタリーのような作品。多くの演者は本人役で出ているのでドキュメンタリーのように感じるのはとても自然かもしれない。そもそも、ドキュメンタリー映画でも人はカメラの前で立つ時点ですでに「演技」をしているのだから、その境目はあってないようなものかも。
自然や生きものに対して神的かつ霊的なものを感じることに、日本人が本来持っていたがどこかで失ってしまったもの、記憶の彼方にある何かしらの懐かしさを感じる。
古来より日本本土においても、神が鳥や動物に降臨して特殊な能力を発揮すると伝えられてきた。また、食事は生きものの命を摂取するという意味でも、犠牲になる命への感謝や神々への感謝ということを意識していたと思う。
日本人は近代工業化の過程で、西洋諸国から中身(キリスト教的精神文化)を抜け落し外身(技術や法や制度)だけを引き継いだため、私たち日本人の今の社会はすべてが平均的で空っぽで無機質なものになってしまったような気がしてならない。
根なし草の現代人からみると、地域に根を持つアイデンティティを持つ人々は幸せだ。しかし世界を見渡すと、中国自治区やミャンマー、中央アジアなど世界中で少数民族の「抹殺」の手がひろがっている。彼らの文化や誇りが若い人たちにきちんと受け継がれていくことを願うばかりだ。
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