劇場公開日 2021年9月23日

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「ここ最近で見た映画で一番良かった」空白 一発屋さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ここ最近で見た映画で一番良かった

2022年5月17日
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鑑賞方法:DVD/BD

とても見応えがありました。

不運が重なってしまって、事故に遭ったが、執拗に店長を責める父親。一人娘を亡くして一方的になってしまうのは分かるが、それにしてもこの人はずっと自分が正しいと思って生きてきたタイプなんだな、と。亭主関白な父親だと自己主張の出来ない子供になりがちなんですよね。厳格なわりには子供のことをなにも知らない。

"透明なマニキュア"もキーワードになってて面白かった。父親は娘のことを信じてたというよりは自分の中での娘を作り上げてたんだなと思った。

追い詰められた店長が弁当屋さんにクレーム入れるシーンは心が痛みました。人間極限まで追い詰められると自分がされた嫌なことを他人にやってしまうんですよね。

車で跳ねてしまった中山さんが自殺して、葬式で添田父が「俺は謝らないからな」って言葉を放った時こいつマジかよって思ったけど、その後の中山母の対応が大人でしたね。本当はあなたのせいで娘が死んだくらいには思ってるはずなのに、それでも娘に非があったことを認め頭を下げる。普通の人じゃできないですよ。今まで人のせいにして自分が正しいと思って生きてきた添田には衝撃だったんでしょうね。そこから改心していく様子も面白かったです。ここの親子の対比がうまく描かれていてすばらしい。

もしかしたら、店長はわいせつな行為をしたのかもしれない、中山さんは法定速度を守ってなかったのかもしれない(それだと罪の意識に苛まれて自殺してしまうのも辻褄が合う)と色々考察できるのも面白い。

そしてトドメを刺したトラック運転手は、取り調べの後一回も出てきてないんですよね。轢いてしまった時も「うわぁ…」みたいな態度だったしあまり自分に責任を感じていないのでしょう。事件の後も忘れてのうのうと生きてるから物語からも離脱したんでしょうね。強く思い悩む人がいる一方でこういうあっけらかんとしてる人もいるのがリアルでよかったです。

とりあえず、自分が一番正しいんだと思って生きている人に見せたい映画でした。

餅