「胸糞悪い映画です」空白 SHIKIさんの映画レビュー(感想・評価)
胸糞悪い映画です
※胸糞ばっか言ってるのでご了承下さい。
この映画をなんて表すのが一番良いんだろう?と考えた結論。
「胸糞悪い映画です」
この映画は普段私が目を逸らしている、人間の嫌なところをこれでもか!と見せてくるので、
「こっちは気づかなかったことにしてるんだよ…やめてくれよ…」
と、非常に苦しくなります。全編通してしんどい。見終わった今切実に記憶を消したい。
二回は見たくない。
また、話の中で絶対悪になる存在がいない&実際に聞く出来事が起きたりしている(マスゴミの切り取り報道や正義の味方ぶった一般市民の私刑など)ので、本当に日常を切り取って見ている気にされます。
登場人物それぞれ胸糞だなと思うのですが、とりあえずトップ3を挙げておくと、
① 古田新太さん演じる父親
冒頭から人間として終わってる。ずっと漁師一本でやってきた(多分)、価値観が凝り固まった『自分が絶対正しいマン』で、人の話を聞きやしない。
でもこういう職人気質のおじさん居るよね。と思うリアルさが、こちらの気分を最高潮に害してきます。
流石古田新太さんだな、と。(古田新太さん大好きです。)
娘を殺されているのだから許せる訳はないのだけれど(むしろそんなすぐに許せたらどこの聖人君子だよ、と思うけど)途中から
『「万引きした娘が逃げて殺された話」じゃなくて、
「まったく落ち度が無かった娘が悪いやつに拐かされそうになった結果殺された話」にしたい(しか俺の中ではあり得ない)から、それを真実としてお前が話すまで追い詰めるマン』になるのでやっぱり胸糞です。
やり方間違ってるんだよなぁ…。
② ボランティア大好きおばさん
ああ、こういう人いるよね…と思う…
『私は貴重な自分の時間を使って慈善活動をしている、だから私が言うことやることは絶対正しいマン』です。
自分がやることは全て自己満足。「人のためを思ってやってあげた」は、結局自分のため。人に押し付けるのはやめましょう。と、自戒になりました。
年齢的にどんどん近づいていくので、本当に気を付けたいと思います。
③ 要所要所で出てくるモブ
これこそ胸糞の鉄板、まったく関係ない第三者がさも正義面して私刑。や、話題になるからと面白がって冷やかし。
こいつらマジで腹立つ~暇人か!と思うけど、いざ自分がその第三者になった時、同じ事しないって言えるの?
と、これまた自戒になりました。人の振り見て我が振り直せ。
その他、松坂桃李さん演じる店長や、轢かれてしまう娘さん、いきなり車の影から飛び出されて轢いてしまうお嬢さんやとどめをさしたトラックの運転手など、それぞれの視点から見ると救いが全く無くて本当に息が苦しくなる。
特にトラックの運転手については冒頭でしか描かれていなかったけど、実際にあったとしたらもっとキツいんじゃないかな、と思います。
特に轢かれてしまう娘さんの描かれ方が私は切なかった。
普通の引っ込み思案、ともすればいじめでも受けていたのかな?と思いきや、それ以前の問題だった。
もっと早い段階で気づいてあげることが出来ていて、対応できていればまた違ったのかな。と思うと切ない。(そこで言うと母親が気づいてたのにな、というところがありますが…)
そしてなあなあで済ませようとする教育現場への切り込みが鋭い。
担任の先生が自分の教育に疑問を感じるけれど、それを押し潰していくところなんてしょっちゅう取り沙汰されている事で、ああこうやって教育現場は若い芽を押し潰していくのだな、としみじみ思いました。
と、ポイントを上げていくとキリがないのですが、
結論、見る価値あります。
胸糞な登場人物たちも、話が進んでいく事で自分の行いを振り返り、自問自答し、うまくいかない現実にもがきながら進み始めるのでずっと胸糞展開が続くわけではありません。(まぁ松坂桃李くんは最早PTSDだよね、という位に追い詰められることにはなっちゃうんですけど…)
でも見る価値あります!むしろこれは見た方がいい!
ただ、見終わった後めちゃくちゃ疲れるのと、気分がどんよりするのは覚悟して見た方が良いかもしれません(それだけ俳優さん達の演技と脚本と演出が素晴らしいということなので…笑)
ちなみに胸糞胸糞言ってますが、漁師の弟子が「コイツいいやつだなー」と、要所要所で良い味出してます。
「自分はあなたが父親だったら嫌ですね」的なセリフを古田新太さんに言うシーンがあるんですが、いや良く言ったなお前…!!と、その瞬間喝采を送りたかった。
その他、しつこいマスコミを港から追い出したり、クソジジイと言いつつ師匠を尊敬しているのが伝わってきて凄くいい弟子でした。
それと最後に出てくるトラックの運ちゃん。松坂桃李くんに救いを与えてくれるんですけど、なんか好き笑
途中で桃李くんが轢かれそうになるトラックの運ちゃんもこの人だった気がする?
あと、個人的に一番泣けたのが、轢いてしまったお嬢さんがなんやかやなった時のお母さんの涙と、そのお母さんが古田父にかける言葉ですかね…
古田一家の涙では正直泣けなかったんですが、このお母さんにはものすごく泣かされました。
自分が同じ状況に立っても絶対言えないな、凄いな、と思いました。
頑なだった父親に『お前は娘のことを理解してもいないのに良く言えたもんだな?』と投げ掛ける(父親側が勝手にそう感じるだけですが)場面は、唯一もう一回見たいな、と思うシーンでした。
この映画を見て感じることは人それぞれだと思いますが、何かしら必ず残る作品になると思うのでオススメです。