劇場公開日 2021年9月23日

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「私の空白の受け取り方。」空白 はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私の空白の受け取り方。

2021年9月30日
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鑑賞方法:映画館

重かった。ひとつの死をきっかけに関わった人々の日常が壊れてゆく。失って初めて娘と向き合うことになる父の充。なぜ娘は命を奪われたのか。あらぬ妄想を膨らませ行動がエスカレートしてゆく。しかしこの世の中に目も当てられぬ無惨な姿になった我が子を前に正気を保てる親なんていないだろう。何かしていなければ狂ってしまいそうな日々の中で娘の幻影を追い続ける。

一方スーパーの店長直人。気弱で自己主張が苦手。自称頼られる存在の古参パート従業員に振り回されている。その上事故をきっかけに充やマスコミ、そして世間から容赦なく責め立てられる。何度額を地面に擦り付ければこの後悔や罪を受け入れてもらえるのか。行き場のないストレスに今にも押し潰されてしまいそうだ。

古田新太と松坂桃李の息の詰まるような対峙に胸打たれます。そして少ない出番ながらも片岡礼子さんが圧巻でした。結局みんなどうしていいのか分からなかった。痛みや憤り、苦しみや怒りを誰にぶつければいいのか。

大切な人を失っても過ぎてゆく時間の中でそれぞれが新しい物を手に入れたり、些細なことに救われたりしながら、きっとそうやってこれからも生きてゆく。悲しいけれどいいラストでした。

最後にこの「空白」というタイトルの奥深さ。観る人によって全く受け取り方が違うと思う。さしずめ私はあの日手を掴んでから走り出すまでの時間だと受け取った。その空白に何があったのか。充が最後まで疑念が残ると言った直人のある疑惑。真偽は定かではないものの良からぬ過去の噂。実のところ私も充と同じ不安を拭い去れないでいる。

はるたろう