劇場公開日 2021年9月23日

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「片岡礼子の演じる人物について」空白 Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0片岡礼子の演じる人物について

2021年9月28日
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鑑賞方法:映画館

この映画は道徳を描くものではなく、最後に世間の望むような道徳にたどり着く人を描くものでもないですね。人間を描くことに重点は置かれていますが。
そこから浮かび上がるのは、他者に過度に道徳的であることを求めてはいないか?という我々の道徳観への問いかけですね。
フィクションの人物にすら道徳を求めてしまう人も多い中、冷静にこの作品の言わんとするところを考えたいと思いました。

一つ言いたいのは、片岡礼子が演じる女性についてです。(ネタバレになるのでこういう呼び方にしておきます)

全面的に悪いわけでもないが、かといって非がないではない、という人物ばかりが出てくるこの作品で、彼女に「非」に当たるものは描かれていません。
非があるわけないのですから当然ですが。
しかし、この映画で松坂桃李が過剰に謝るのに並んで、謝罪の場面があるのが彼女です。

この場面に感動したというコメントを見かけますが、どういう意味の感動なのでしょう?
彼女が自分で語る「非」を、まさか本当に「非」だとは思ってませんよね?

私はあの場面は、世間が望む「道徳的な姿」を先取りして「こういう態度を取れば満足ですか?」という問いを製作者側が投げかけている場面だと思いました。
本当は、古田新太をなじり、罵倒してもいいんですよ。それが人間ですから。そのあとで謝ったっていいんです。

彼女にそうした人間的な態度を取ることを許さなかったものがあるわけです。
それが我々の過度な道徳観ですね。
私はそうした批評を含んだ場面だと思いました。

それを完全に理解して演じている片岡さんはやはり素晴らしい俳優さんだと改めて思いました。

Pocaris
Pocarisさんのコメント
2021年10月16日

というか、それこそ過剰な謝罪の要求そのものなんですけど……

松坂桃李がなぜ謝罪をしなければならないんです?
「絶対に謝罪をしなければならない、完全に非がある人」なんてこの映画には出てきませんよ。

Pocaris
いなかびとさんのコメント
2021年10月13日

私はポカリスさんのようには受取りませんでした。過度な道徳感を私達は求めているとは思いません。巷に溢れるうわべだけの謝罪を批判しているように私は思いました。表面上だけの謝罪。松坂桃李のように真摯に反省している謝罪を私達は求めている。加害者側が真摯に謝罪しても、抑えることのできない父親の怒り。人間の業だと思います。
病気が原因で亡くなれば諦めることができるのに、他者の故意や過失が絡んでいるとその責任を問い詰めたくなるのが人間です。
問い詰めても、生き返るはずもない。そんなことは本人も分かっているが、感情が収まらない。真摯な謝罪があったなら、時が折り合いをつけてくれると私は、思いました。

いなかびと