劇場公開日 2021年9月23日

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「善悪にカテゴライズできない不寛容〈イントレランス〉」空白 ムービードープさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0善悪にカテゴライズできない不寛容〈イントレランス〉

2021年8月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

怖い

想像を遥かに超える途轍もない大傑作。
万引きを犯した少女の不慮の死により乱れる秩序。善と悪をカテゴライズせず、登場人物が持つ正義や信条が狂気のままに衝突するため、常に息苦しい。そのカオスの先…混沌たる空白の世界を彩る温かい視点のあまりの素晴らしさに言葉を失った。

膨れ上がる被害の妄想…無闇矢鱈に他人を責める者、声を押し殺して自分を極限まで追い詰める者、そして誰かに赦しを請う者など、当事者すべてが折り合いのつけられない虚無や怒りを抱えている。さらに、安全地帯から偏向的に報道するマスコミ、それを信じ込んだ人びとの醜悪さ。それらすべての視点を誰か1人に肩入れすることなく、俯瞰的に魅せているため、最大限に映画へ没入することができる。

また、キャスト陣の演技がリアリティに対する説得力を上げる。天地を揺るがす毒親の古田新太の傍若無人っぷりと表情や所作だけで感情の僅かな機微を伝える演技は別格。
『孤狼の血 LEVEL2』とは打って変わって、常に冴えない雰囲気を醸し出す松坂桃李はもはやカメレオン俳優というべき引き出しの多さ。
脇を固める藤原季節と趣里のさりげない演技、善意押し付け寺島しのぶの演技。
そして、片岡礼子の立ち位置は劇中で最も重要であり、凄まじい演技に涙腺やられました。
どの人の演技をとっても深く胸に刻まれるものでした。すべての俳優の演技が印象に残るという稀有な作品。

今年ベスト入り確定の大傑作です。

ムービードープ