「これは救いのない悲劇だった」凪の海 エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
これは救いのない悲劇だった
十分過ぎるほど落ちた。
愛媛県の西の外れ、宇和海に突き出した小さな漁村・蒋淵(こもぶち)。宇和島市に編入されたこの村は、宇和島市街から遠く離れ、松山は遥か彼方だった。その距離以上に隔絶していた。閉塞していた。
10年前にミュージシャンを目指し東京に出た圭介(永岡佑)は兄の訃報を知らされ帰郷した。そこには独りになった父(外波山文明)、葬式を手伝いに来た兄の別れた妻・沙織(柳英里紗)、兄の最後の目撃者となった同級生の洋(湯澤俊典)、洋の妹で足の不自由な凪(小園優)がいた。
そう、これはこの五人と圭介の兄の物語だった。
東京で成功しているという圭介の嘘、語られることがない兄の苦悩、洋と凪の両親の死の真相、洋の凪に対する異常な依存と束縛。悲劇のつづれおり。悲劇は必然だった。
しかし凪に訪れた突然の悲劇がすべてを圧倒した。容赦なかった。先月観たブレッソンの2作品を思った。
上映後、凪を演じた小園優さんのトークショーがありました。ピュアで誠実な印象の方でした。『凪は本当にいたのかなぁ』という言葉に改めて凪の存在の危うさを思いました。
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