「平手、グループやめるってよ」僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
平手、グループやめるってよ
総勢22人で活動をスタートした欅坂46。その中でひときわ特別な存在となってしまった平手友梨奈。このグループの熱烈なファンでない私は彼女がどれほどの存在なのかを知らずに鑑賞したが、本作を観ても彼女が何者なのかは分からない。しかし、そのミステリアスさこそがリアルな『桐島、部活やめるってよ』として映画の面白さを担保する。
平手というカリスマ的存在と彼女がグループ内からいなくなった時のメンバーの動揺。言わずもがな、彼女たちはアイドルだ。歌って、踊って、ファンを喜ばせたいという気持ちは誰もが持っていることだろう。だからこそ、グループとしてベストなものを作りたい、届けたい、今までにはないアイドルグループになりたいという目標は誰もが持っていた。だが、そのベクトルがいつしか異なる方向を向きだす。わがままにも思える平手の行動は欅坂というグループを繋ぐ鎖にもなれば、亀裂を生む刃にもなる。雪崩のようにグループは崩壊しないものの、どこかで起こったボタンの掛け違いが“不協和音”を生み出していく。
アイドルだ、芸能人だと言っても、個々には10代後半〜20代前半の女の子だ。ライブ前のステージ裏で聞こえる音楽やファンの声援はプレッシャーとなってその背中に押しかかってくる。逃げ出す子もいる、泣き出す子もいる。悲鳴にも似た叫び声がパフォーマンス中の音楽に混じって聞こえてくる。序盤に石森虹花が言う「みんなで手を繋いで崖の上に立っている感じ」というのが彼女たちの危うさを見事に表現している。
しかし、メンバーが平手を頼っていた反面、東京ドームでのソロダンスを見ると、彼女が背負っていたものがどれほど重たいものだったのかが見えてくる。メンバーの脱退や新曲リリースの延期、幾度となく囁かれる活動休止や解散などのネガティブな声。そして、決断する改名という選択。1曲、1曲を命を削りながら歌うような彼女たちの姿には、恐怖にも似た感動を覚えるが、最後に流れる「誰がその鐘を鳴らすのか?」は有終の美を飾るのに最適な1曲。1つのグループの栄光と終焉の物語として、見応えのある一作だった。