「流石にふざけすぎ」大怪獣のあとしまつ 皆友さんの映画レビュー(感想・評価)
流石にふざけすぎ
最近Amazon primeに入りなおし、会員限定作品を見返しているところである。
その中で、当時酷評だらけだった作品を発見した。それが当作品である。
初っ端からガッツリとネタバレをするが、これは実はウルトラマンのパロディである。
前情報である特務隊なる謎の超軍事組織、アラタという名前の青年の2つだけで十分気づけたラインであった。
加えて、謎の光によって怪獣が死亡したことや、アラタが謎の光に巻き込まれた後に行方不明になるなど、「事前情報だけでわからなかったの? ヒントあげるよ」と煽ってくる始末だ。
そして最後にスマホをかかげて変身である。正直してやられた。
特撮ものによくある上部組織の論説による鍔迫り合いは、そのまま監督自ら手がけた脚本の手でシュールなコメディへと成り下がる。ここの部分は実は個人的に気に入っている。
面倒事を放り込まれた組織なんて、大抵こうなるものである。それを面白おかしく描くそのセンスは十分評価できる。
じゃあ何が問題なのか? それはこの映画がふざけすぎであることだ。
あいまあいまに挟み込まれるギャグの内容がうんこちんちんレベルである。ネタではなく本当にうんこちんちんレベルだ。
真面目な会議の現場がシュールな状況に追い込まれたトドメにうんこちんちんである。流石に程度が過ぎている。
また、恋愛描写もひとたびギャグのノリに入るとCMのネタレベルに成り下がる。確か昔きのこのCMで過剰に不倫を思わせる描写が問題となってお蔵入りになってしまったCMがあったことを覚えてるが、そのレベルだ。
これが衆愚の狂想曲や無駄にイケメンの俳優を用いてキメてくる程度であれば清涼剤にもなったかもしれない。しかしこれは明らかにやりすぎである。
そしてこのギャグをやるためにいくらかの尺を使っているのがたちが悪い。
本映画は二時間とそれなりの長さがあるが、この作品の一時間分が下品なギャグで出来ている。
いくらなんでも長すぎる。もう少し切り飛ばしてくれたら、作品に注目する集中力も維持できたかもしれない。
そういうわけで、この映画を見るところもないつまらない映画と断罪することはできなかった。
素材はよく、味付けもまぁまぁ。邪魔なのはトッピングである。
真面目とおふざけのレベル差が非常に激しく、またその時間も両方織り交ぜて畳み掛けてくるため、単体で見れば笑えそうなネタでもうまく笑うことができない。かといって集中して見ていると、途端に覚めさせるようなギャグが飛んでくる。
……どのようなテンションでこの映画を見ればよかったのだろうか?
このような認知的不協和は、ひとえに監督の悪ふざけが過ぎているところでもあるし、おそらくそれが監督本来の持ち味である。
この点を鑑みると、この作品は可もなく不可もなし、としか言いようがない、なんとも微妙な出来になってしまっているのだ。
それでも評価を2としたのは、自分自身がうんこちんちんレベルのネタを笑うことができるほどの純粋さをなくしてしまった証なのかもしれない。
ともかく、この映画はクソというには面白いし、良い映画というにはふざけすぎている。
無料配信が終わるまでに見て、話のタネにするぐらいの質はあるだろう。そのために二時間を溶かすかどうかは、よく検討するのをおすすめする。