「【”言葉は民族の精神”大日本帝国支配下の朝鮮で、母国語の辞書作りに命を懸ける人たちの姿を描いた逸品。ユ・ヘジン演じる文盲の男と朝鮮語学会の代表との交流と別れが沁みる作品でもある。】」マルモイ ことばあつめ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”言葉は民族の精神”大日本帝国支配下の朝鮮で、母国語の辞書作りに命を懸ける人たちの姿を描いた逸品。ユ・ヘジン演じる文盲の男と朝鮮語学会の代表との交流と別れが沁みる作品でもある。】
■大日本帝国支配下の朝鮮、京城が舞台。
前科持ちでお調子者のパンス(ユ・ヘジン)はある日、息子の授業料を払うために朝鮮語学会の代表リュ・ジョンファン(ユン・ゲサン)のバッグを盗む。
ジョンファンは大日本帝国陸軍により使用を禁止されて行く朝鮮語の辞書を作ろうと“方言も含めた朝鮮語”を集め、自国の精神、文化のために辞書を作ろうとする男だった。
ジョンファンと接するうちに文盲のパンスは字を覚え、読み書きが出来る事の喜びと、母国語の魅力に気づかされていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は、ユ・ヘジンならではのコミカルな展開が面白い。
・だが、中盤、後半も大日本帝国陸軍による、朝鮮文化統制、朝鮮民族への日本語教育の徹底、日本の名前への改名に至るシーンや、朝鮮語学会メンバーに対する拷問などは、観ていてキツイ。
・だが、ユ・ヘジン演じるパンスが、字を覚え、読み書きが出来る事の喜びに目覚め、朝鮮語学会の代表リュ・ジョンファンに協力していくシーンは沁みる。
方言を集めるために、パンスの悪友達を集め、夫々の出身地域の方言を収集していくシーンや、映画館に朝鮮語学会に賛同する人たちを集め、集会を開くシーン。
■日本が、終戦が近づくにつれ朝鮮民族への弾圧を強めて行くシーン。矛先は朝鮮語学会にも向けられる中、パンスとリュ・ヘジンは必死に辞書を作るための言葉を守ろうとするが、大日本帝国軍人たちに襲われて行く。
<パンスが銃弾に斃れた後、終戦になり朝鮮語辞典は無事に創刊されるのだが、そこに挟まっていたパンスが子供達に残した手紙のシーンも、沁みた作品である。
戦争になると、文化統制が行われるのは歴史の必然ではあるが、それに屈せずに成果を成し遂げた方々には尊崇の念を改めて抱いた作品である。>
■学生時代に、朝鮮ではなく中国を一カ月半放浪していた事があるが、その際に金が無かったので汽車の硬座(二等車)に乗って旅をつづけた際に、中国の年配の方々から笑いながら”バカヤロー”と言われた事を思い出す。あとは、腕を組んでいると日本の軍人を思い出すらしく、笑いながら”怖いよ”とも言われたなあ。
今作を観ている時と同様に、居心地が悪かった事を思い出してしまったよ。