「良い人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」瞽女 GOZE 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
良い人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行
昭和の頃までは、まだ盲人の旅芸人が存在した。かの津軽三味線の高橋竹山氏もそうだ。娯楽のない地方の農民たちは彼らの来訪を待ち望んでいただろう。今では成立しないエンタメだ。また、様々な話を聞くことも楽しみだったに違いない。それは富山の売薬さんたちに求められたものと同じだ。それゆえに、望まれるものにはその喜びと使命感があった。
集落の皆が集まって、純粋に瞽女さんたちの歌に聴き惚れる渇望感。それは、かつて日本の農村が貧しかった風景そのものなのだけど、そこには心の豊かさを感じるのだよなあ。
この映画は、最後の瞽女と呼ばれた小林ハルさんの物語。真実がどこまでかは知れないが、その過酷な人生にそう差異はあるまい。はじめの親方は厳しかった。しかも、イジメもあった。それでも、彼女は母の戒めを胸に耐えた。そのご褒美のような二人目の親方。しかし、そのあとに・・。禍福はあざなえる縄の如しとはまさにこれ。苦労を修行と心得て、幸せを祭りと楽しむ。その信条のように。そしてある時気付くのだ、母の慈愛の言葉を。鬼となった母の、深い愛を。
物語の演出の良さもさることながら、役者陣の皆さんの素晴らしさ。端役で出てくる何人もの有名役者も含め、おひとり、おひとり、真摯に役に没頭するその姿の気高ささえ漂っていた。
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