劇場公開日 2021年4月9日

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「想像を遥かに超えた衝撃的な恋物語」砕け散るところを見せてあげる みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0想像を遥かに超えた衝撃的な恋物語

2022年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

想像を遥かに超えた衝撃的なラブストーリーだった。前半の二人の高校生(中川大志、石井杏奈)のカップルらしいコミカルな会話が作品の雰囲気と微妙にずれていた。浮いていた。純粋な青春ラブストーリーが主題とは思えなかった。これは、後半に何かあるなと思っていたら、後半は前半とは激変した展開になったが、二人の想いがより強調されて心に深く刻み込まれた。

本作の主人公は、高校3年生の濱田清澄(中山大志)と高校1年生の蔵本玻璃(石井杏奈)。正義感が強い清澄は、クラスで嫌われ、いじめられていた玻璃を救う。そのことがきっかけとなり、二人は親密になり次第に惹かれ合っていく。しかし、玻璃には秘密があり、その秘密の影が次第に二人に忍び寄ってくる・・・。

序盤に曖昧な部分があるが、曖昧さに拘らず素直に観た方が、終盤の二人の想いをより強く感じることができる。

中川大志は、ヒーローになることを夢見る正義感の強い、玻璃への想いを秘めた清澄を自然体の演技で表現している。石井杏奈は、いじめられていたが清澄によって覚醒し、次第に彼に惹かれていく謎めいた玻璃を独特な台詞回しと眼差しで怪演している。惹かれ合う二人のコミカルな会話が面白い。玻璃の父親役の堤真一は、後半のキーパーソンであり、佇まい、仕草などで彼の役どころが分かるのは流石。圧倒的な存在感で後半を仕切っている。

起承転結の転と結が本作の真骨頂である。転では、激しい展開のなかで、玻璃は心の鎖を自ら断ち切り開放され精神的に自立していく。結では、物語はモノローグを使って劇中の曖昧な箇所を補完して結実する。曖昧さが払拭され、正しく点が線になって、物語が淀みなく繋がっていく。二人の想いが完全把握でき胸が熱くなる。

衝撃的な作品であり過激な描写が多かったが、観終わって後味の悪さは感じない。何故か。それは、本作が今に特化した恋愛ではなく、時代を超えて変わることのない普遍的な恋愛を描いているからである。

みかずき