劇場公開日 2021年3月19日

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「これが「普通」?」まともじゃないのは君も一緒 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0これが「普通」?

2021年4月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

成田凌も清原果耶もすごく上手い。ストーリーが展開するにつれて変わっていく大野の恋愛スキルと、二人の立ち位置。その心理描写が初々しくて、応援する気持ちが増していく。

だけど。
基本的に、空気の読めない大野はアスペルガーなわけで、それは天邪鬼なわけでもなくてホントに人の心が読めないわけで。森に安心を求める彼は、自然界の調和に身をゆだねる心地よさを知っている。思惑ばかりの世間から離れたいと思うのは、社会的スキルの欠如した彼としては当然なのだ。あの変な笑い方をみると、僕は「気持ち悪っ」て笑うどころか、胸を締め付けられる。ああアスペなんだな、って思うから。その彼を「普通じゃない」と断罪して始まるところから、ちょっと冷めてしまった。彼は彼で、世の中での生き方を覚えたうえでの人付き合いをしてきたのが垣間見える。美奈子と上手くいったのは、彼女自身が欲の渦巻く大人の世界に疲れて、純粋な大野の言動に安らぎを覚えたからじゃないかな。だから、会いたい気持ちはあっても、この先一緒に生きていく決心までは揺らいでしまうのだ。利発なゆえに自分の境遇を受け入れざるをえない不憫な美奈子と、おそらくこの先も「普通」じゃない大野。なんか、そっちに感情を持っていかれて、純粋に楽しかった、って言い切れない。最後の締め方にわずかでも将来の希望が見えたのが救い。

栗太郎