「題名がよろしい。「フツー」というのは、人と違っていることに恐れる人間の不安感を紛らすために生まれた便利だけど中身の無い言葉なんでしょうなあ。」まともじゃないのは君も一緒 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
題名がよろしい。「フツー」というのは、人と違っていることに恐れる人間の不安感を紛らすために生まれた便利だけど中身の無い言葉なんでしょうなあ。
①凸凹コンビのラブコメ、恋のキューピッド役をしているうちに相手に恋してしまい…というラブコメは30年代のハリウッド黄金時代から数限りなくある。この既視感ありありの映画群を面白く魅せるのは、何よりシチュエーションとキャラクターの設定がミソで、あとはシチュエーションを活かす演出・脚本の妙やコメディセンス、キャラクターに扮する役者の魅力と演技力である。②そういう点では、この映画はシチュエーションとキャラクターの設定はOK。何より主演の二人の掛け合い漫才のようなやり取りが面白い。脚本も悪くない(脚本の高田亮は『さよなら渓谷』や『ここのみで光輝く』※どちらも秀作、の脚本家なんだ。何でも屋かコメディは得意分野でははいのか)が、この映画の魅力はこの二人の演技合戦に尽きるといっても良いだろう。清原果耶はこの映画ではいつもより気が強く口が達者でしかし頭でっかちの現代っ子の役。しかし、この歳で安心して演技を見ていられるというこの安定感・信頼感は凄い。大野への想いに気づくシーンも流石に上手い。ご贔屓の成田凌も相手役として遜色ないが、敢えて注文を付けるとすれば、もう少しトッポい感じがあれば良かった。ただ、このキャラクターには珍しく熱く語るシーンには実力を見せた。③美奈子役は少しキレイで演技が出来れば誰でもソコソコ行けるという役なので可もなく不可もなくというところだが、問題は宮本役の小泉孝太郎にある。良くできたハリウッド映画(コメディ)であれば、この役はヒロインが疑似恋愛に陥るほど表面はカリスマ性と魅力がありながら、実は小心者でセコい内面とのギャップの暴露にコメディセンスを発揮できる名脇役に演じさせる役である。ラブホテルの一室でのシーンも役者次第ではもっと面白いシーンになった筈。その点では小泉孝太郎は役者としてまだまだ力量不足。この映画での一番の不満点である。④監督は無難に纏めているが主役の二人におんぶにだっこみたいな感じで『婚前旅行』でも感じたがももう少し演出にコメディセンスが欲しい。