望み : 特集
【見どころ解説】息子は殺人犯か、それとも被害者か?
あなたに究極の選択を迫る、衝撃と感動のサスペンス
「検察側の罪人」などで知られる雫井脩介氏のサスペンス小説を映画化した「望み」が、10月9日から公開される。
物語の主役は、誰もが羨む幸福な家庭を築いた父と母。彼らの理想的な生活がある出来事を境に一変し、“究極の二者択一”を迫られる様子を丹念に描き出している。
出演は、初共演を飾った堤真一と石田ゆり子をはじめ、将来を嘱望される岡田健史、清原果耶ら。監督は「TRICK」「人魚の眠る家」など多彩なヒット作を手掛けてきた堤幸彦。脚本は「八日目の蝉」「おおかみこどもの雨と雪」などの奥寺佐渡子。
人気・実力ともに日本トップクラスのキャスト・スタッフが集い、“雫井氏の最高傑作”とも称される同名小説の映像化に挑んだ。
本記事では、作品の見どころを解説する。衝撃と感動のサスペンス・エンタテインメント――その幕が上がる。
この究極の問い… あなたならどうする?
「検察側の罪人」作家の最高傑作を、最高品質で映画化
○愛する息子が姿を消した 翌日、新聞は息子の友人が殺された、と報道した
建築家の父・石川一登(堤真一)、編集者の母・貴代美(石田)、高校生の息子・規士(岡田)、中学生の娘・雅(清原)。石川家は瀟洒な家に住む、誰もが羨むような仲睦まじい家族だ。しかし息子がケガでサッカーを辞めたことから、その日常が一変する。
夜遊びが増えた規士は、ある夜、無断外泊の後に姿を消した。翌日、新聞はある殺人事件を報じていた。被害者は、規士の友人だった。さらに警察が自宅を訪ねてきて、息子の関与をほのめかされた。一方でSNSでは、「犯人はまだ捕まっていない、どうやら被害者はもう1人いる」と噂が流れ始めていて……。
息子は事件の加害者なのか? それとも、噂されるもう1人の被害者なのか? 警察は詳しいことは「捜査中」として教えてくれない。母・貴代美は、たとえ息子が犯人であっても生きていてほしい、と祈る。父・一登は、被害者であっても無実でいてほしい、と願う。娘・雅は、兄が殺人犯ならば自分の将来は……と不安に押しつぶされそうになる。家族の思いが交錯し、やがて真実が明らかになる――。
観客席に座り、本作を鑑賞する自分が、もしも一登や貴代美と同じ状況に置かれたとしたら。あなたならどうするだろうか? 物語のラスト、家族が真実にたどり着いた時、見る者の魂は滂沱の涙を流す。
○雫井脩介氏のベストセラー小説を、堤真一×石田ゆり子×堤幸彦監督で映画化
豊川悦司主演で映画化された「犯人に告ぐ」、木村拓哉と二宮和也の共演が話題を呼んだ「検察側の罪人」。これらの原作者であるサスペンス作家・雫井脩介氏が、執筆時に最も苦しみ抜いたという作品が、この「望み」である。
渾身の筆致で刻まれた慟哭の物語は、読者の胸を強く打ち、発行部数20万部を超えるベストセラーに。日本最大級のブックレビューコミュニティ「ブクログ」が実施した読者アンケートでは、満足度100%という驚異の数字を叩き出した。
さらに、評論家の故・中辻理夫氏は「家族の絆は当たり前なのか問う問題作」と評価。同じく評論家の池上冬樹氏も、「家族の絆や希望とは何なのかをとことん追求した秀作。雫井脩介の新たな代表作だろう」と賛辞を送っている。
雫井氏の最高傑作とも称される原作小説が、これ以上ない陣容で映画化されることとなった。
○映画化の出来栄えは“最高級” 原作・雫井氏も脱帽「こんなに泣かされるなんて」
原作者および原作ファンが望まない形で映像化される作品は、残念ながら、枚挙に暇がない。では本作の完成度はどうだろうか。原作・雫井氏の言葉を読み解くと、結果は「最高級」と言えるだろう。
雫井氏「自分の作品の原作映画で、こんなに何度も泣かされるなんて!」
キャスト:国民的実力派俳優×才気あふれる最旬の若手
スタッフ:「人魚の眠る家」監督×「八日目の蝉」脚本
最後に、キャスト・スタッフをご紹介。これだけの豪華な面々が一堂に会する、その画を想像しただけで、期待感に胸がいっぱいになる。
○堤真一/息子の“無実”を信じる父
「ALWAYS 三丁目の夕日」などの感動作から「銀魂」などのコメディ、「容疑者Xの献身」などのヒューマンミステリーまで、様々なジャンルで無二の存在感を発揮する国民的俳優・堤真一。
もしも息子が殺人犯ならば、地位も収入も何もかも失ってしまう……家族の未来のため、息子が被害者であることを望んでしまう父親の迷宮的葛藤を、リアルに演じ切ってみせている。
堤監督は、「大胆な演技と神経質な演技の両方を兼ね備え、まるで役を生きているようでした。一登が次第に追い込まれていく様、哀しみに向き合う様など真に迫っていて、舞台の板の上で中心になる存在感を目の当たりにしました」と惜しみない称賛を寄せている。
○石田ゆり子/生きていてほしい…息子の“無事”を信じる母
行定勲監督作「北の零年」で第29回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞に輝き、近年はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」や映画「マチネの終わりに」で見せた華々しい輝きも記憶に新しい石田。
地位や収入を失ってもいい、ただただ、息子に生きていてほしい……母親のとめどなくあふれる祈りを、丁寧に体現してみせた。堤監督は石田の熱演に共感と感動を覚えたようで、「(撮影中に)石田ゆり子さんの演技にはもらい泣きしたところが何度もありました」と語っている。
○岡田健史/夢を失い、姿を消した息子
俳優デビューを果たしたドラマ「中学聖日記」では、年上の教師(有村架純)を愛してしまう中学生という難役に挑んだ岡田。同作ですさまじい力量を見せ、“業界注目の若手俳優”として大きな脚光を浴びた。
本作では、夢に挫折したことから道を踏み外していく息子・規士役。画面に登場する時間は長くはないが、透明で憂いを帯びた眼差しがとにかく印象的だ。
堤監督は「親が考える以上に他者に対する優しさや未来に対しての確信をもっている。そういう複雑なキャラをこの若さで演じるとは今後が楽しみな俳優です」と期待をにじませている。
○清原果耶/将来を危ぶみ、複雑な感情に苛まれる娘
NHK連続テレビ小説「あさが来た」でデビューを飾った清原。神木隆之介主演「3月のライオン」や、山田孝之製作の「デイアンドナイト」など話題作に立て続けに出演し、その実力から“天才”と呼ばれている注目女優だ。
「望み」では、娘・雅に扮した。超一流高校への受験を控える一方、姿を消した兄のせいで、約束された“輝かしい未来”が脅かされたことに戸惑う役どころ。
堤監督は「噂には聞いていましたが、こわいくらい巧い。完璧以外の何者でもない演技でした。今後の日本の映画やドラマを引っ張っていくことは間違いないでしょう」と明かしている。
○堤幸彦×奥寺佐渡子×森山直太朗/監督、脚本、主題歌、渾身のコラボ
スタッフ、主題歌アーティストの陣容も充実している。監督は堤幸彦。「TRICK」「SPEC」シリーズなど独特の雰囲気が癖になる作品から、「明日の記憶」「悼む人」「人魚の眠る家」など重厚かつ感動的なヒューマンドラマなどを手掛けてきた多彩なヒットメーカーだ。
堤監督とタッグを組む脚本家には、「八日目の蝉」「おおかみこどもの雨と雪」などの奥寺佐渡子。プロデューサーの二宮直彦氏が信頼を寄せる「登場人物の心情や行動をセリフだけに頼らず脚本化する技術」は、本作でも遺憾なく発揮されている。
そして主題歌は、森山直太朗が書き下ろし。試写を見た上で作曲に入り、物語の最後のピースとしてバラード「落日」を完成させた。
○石川邸/もうひとりの“登場人物”
出演には松田翔太、加藤雅也、市毛良枝、竜雷太らが名を連ねているが、あえてピックアップしたいのが、石川一家が住む豪邸だ。というのも、堤監督は「俳優が演じる場のリアリティーを徹底的に描く」ことにこだわっており、結果として石川邸が“もうひとりの登場人物”と言える存在感を見せているからだ。
ロケハンに2カ月を費やし、舞台は東京・青梅に設定。外観は実際に人が住んでいる家を借りて撮影し、室内は角川大映スタジオにセットを組んだ。美術の磯見俊裕氏がデザインした内観は、以下の動画を見てもらえばひと目でわかるだろう、まさに“誰もが羨む理想の暮らし”を具現化している。
第92回アカデミー賞で歴史的快挙を成し遂げた「パラサイト 半地下の家族」も、丘の上の豪邸が“もうひとりの登場人物”として物語に重厚感をもたらした。黒澤明監督作「天国と地獄」では、三船敏郎扮する主人公の邸宅がテーマのひとつを象徴していた。本作もまた、“豪邸映画”の系譜。そうした切り口から鑑賞してみるのも一興だ。