劇場公開日 2020年10月9日

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「少年犯罪の捜査でもっとも心が痛むのは、お子さんの気持ちを知った時です」望み 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5少年犯罪の捜査でもっとも心が痛むのは、お子さんの気持ちを知った時です

2020年10月10日
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鑑賞方法:映画館

たとえ犯人であろうが、生きてさえいてくれればいいと望む母。事件の関与はあるにしても、加害者であってほしくないと望む父。子を思う気持ちは同じでも、望むことは真逆。信じてあげられるのは家族だけだから、「何もやってない」と断言する気持ちもわかるが、信じたい気持ちが強すぎると真実をみおとすのでは?との危惧が止まない。
それよりも増して、どこか心に不穏な筋書きを心配する感情がくすぶっていた。それはこの映画がミステリーだということではなく、堤監督であるということがそうさせる。「人魚の眠る家」の気味悪さや、他のTVシリーズのケッタイな映画化作品など、あまり好みではないからだ。だから正直どこか斜に構えて見てた。でも、この映画はそうではなかった。展開は意外であったが、奇抜ではなかったし、最後に母が記者に言った言葉も、すっと胸に収まった。あんな結末なのに僕の気持ちにやわらかな空気が流れた。それは、父も母もタダシを誇りに思う、優しい眼差しがあったからだ。そして僕がその感情を理解できたから。その時、ふと思い返した。祖母の言ってくれた「何かあっても受け止めてあげなさい。覚悟さえあれば怖いことはないから」という言葉の強さを。

栗太郎