「【独裁者スターリンが亡くなり、何千万人もの人々が涙しながら葬儀を行う様を一切のナレーション無しに延々と描き出し、最後にスターリンの遺体がその後どうなったかをテロップで流す物凄いドキュメンタリー映画。】」国葬 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【独裁者スターリンが亡くなり、何千万人もの人々が涙しながら葬儀を行う様を一切のナレーション無しに延々と描き出し、最後にスターリンの遺体がその後どうなったかをテロップで流す物凄いドキュメンタリー映画。】
ー 1953年3月5日 スターリンの死去が様々な方法で、ソ連の各地方に流される。驚くのはスターリンの死の原因が詳細に民に伝えられるところである。
そして、ポーランド、フィンランド、中国、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、ドイツ、グレートブリテン共産党の要職者たちが、次々に飛行場に降り立つ。笑顔はない。
スターリンは、共産党のシンボル色の真っ赤な棺に入っている。その死に顔をカメラはしっかりと捉えている。
そして、広場にてマレンコフから始まる追悼スピーチが始める。涙する多数の女性達。このフィルムは、各地から取り寄せたモノだそうで、モノクロ、カラーとあるが、それを
セルゲイ・ロズニツァ監督は、違和感なく繋いでこの物凄い国葬を映し出しているのである。
2時間が過ぎた所で、漸くテロップが流れる。そのテロップの文言は実にシニカルである。
”スターリンの独裁時代に、2700万人の人達が殺害、拷問、強制収容所に入れられた。1500万人が餓死した。(ウクライナで行われた、ホロドモールの事である。)1961年まで遺体はレーニン廟で保存されていたが、1956年のフルシチョフによるソ連共産党大会でのスターリン批判により、スターリンの遺体はレーニン廟から出された。”と流れるのである。
<延々と、物凄い規模のスターリンの国葬シーンを何のテロップ、コメントなしに流し続け、最後にスターリンの個人崇拝と独裁による多くの問題を指摘したフルシチョフによるスターリン批判により、レーニン廟から遺体は出されたというテロップを流す、セルゲイ・ロズニツァ監督が観る側に伝えたかった事が、物凄く良く分かるドキュメンタリー映画である。>