「ドキュメンタリー作品としては最低」国葬 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリー作品としては最低
滑らかな白黒映像は今作った再現映像で、ざらついたカラー映像が歴史的フッテージなのかと思いきや、両方とも本物の映像資料らしい。
カラー映像の赤いリボンや花の色が、(国旗の色とは異なるが)妙に“ソ連”という感じがして(笑)良かった。
さんざん「レクイエム」(モーツァルト)を聞かされるので、「交響曲第5番」(チャイコフスキー)が流れた時は、新鮮だった。
なんと言っても、「全体主義」というものの凄まじさが映し出されているのが興味深い。
全国の大量の人民を動員して、涙を流す演技もさせる(強制せずとも周囲の雰囲気で、そうする気分に追い込んでしまう)。
スターリン礼賛のアナウンスは、北朝鮮ばりに力がこもっていた。
とはいえ、死に至るまでの詳すぎる病状の推移のレポートを聞くと、スターリンはあくまで共産主義の同志である“人間”として扱われており、“神格化”とはまた違う状況であることが分かる。(北朝鮮では、こうはいくまい。)
ただし、映像の貴重さはともかく、ドキュメンタリー作品としては、最低の部類だと思う。
時系列はあるものの、撮影場所の説明しかない、同じような映像が延々と続く。
この作品の映像については、あまりコメントする意味がないのかもしれない。
しかし、ロズニツァという監督は、自身の“流儀”として、意図的に格好つけてコメンタリーの類いを省いていると考えるべきだろう。
そのことは、意味もなく白黒映像にして、何の解説も入れずに同じ映像を延々と流し続ける、同時上映の「アウステルリッツ」を観て確信したことである。
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