劇場公開日 2021年9月17日

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「残された者は噛みしめる、今から何かを変えるために」君は永遠にそいつらより若い たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0残された者は噛みしめる、今から何かを変えるために

2021年9月9日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

幸せ

凛としながらパワフル。青春の匂いと表裏一体の闇を照らす。決してダイナミックではないが、それが彼らの呼吸を感じさせる。

大学生活のぼんやりとした日々。退屈と焦燥の狭間に生きる堀貝。序盤からどこか「自分と似ている」ような気がして、引き込まれてしまった。サバサバしているけど、名もなき夜に孤独を感じるタイプ。その中で処女も言わば焦燥のアイコンのような存在として置かれている。この物語は、彼女の"周り"に起こる変化がもたらす外界の影響を映す作品である。

少し作品の核を突けば、日常に隣り合わせにいる「暴力」と「空白」を問うモノだと感じる。児童福祉課の就職をあっさりと決めた一方、子供を助けた穂峰が突然死んでいまい、ふと立ち止まる。また、バイトの後輩の安田は自分のコンプレックスで悩み、いつの間にか空白を誰かが簡単に埋めてくれる。そう思うと、自分は何者なのか、必要なのか分からなくなってくる。そうした意味を問い、導いてくれるような強い作品。しかも、その人をいつまでもすがることなんてそうそうない訳で。たまたま世代が近いこともあって、共感と救いを感じた。

主人公の堀貝を演じる佐久間由衣が素晴らしい。端正なルックスを持った彼女だが、それを削いで生まれたキャラが本当に上手い。言葉を選ばずに言うと男性的であり、やや距離を置かれるが仲の良い人はいるような人物を体現している。どことなく自分の性格と似ている気がして辛い。一方の奈緒も痺れる演技を魅せてくれる。『先生、私のとなりに座っていただけませんか?』も『マイ・ダディ』も先に観たが、作品で印象がまるで違う。この作品のミューズであり、言わば"ヒロイン"のような存在。全くフラットな関係で描かれる二人の姿が印象的だ。もう一度観たくなる、深く快い作品に写った。

男性キャストも素晴らしく、繊細かつ力強い作品に仕上がっている。これから先、どうなるか分からない人生を私は泳ぎきっていけるのだろうか。これまでの道程は間違っていないか。そんな漠然と不安と迫る岐路。そこに光を見出す堀貝が少し羨ましくも思える。公開されたらまたスクリーンで観て、考えてみたい。

たいよーさん。