「ファンタジーに非ず、幻想文学の手触り」水を抱く女 よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーに非ず、幻想文学の手触り
19世紀の幻想文学が好きなら、この映画はうってつけである。ファンタジーという言葉が手垢にまみれてしまった現代において、これほどかつての幻想文学の薫りを漂わせる映像作品に出会えたことを喜びたい。
水の精の物語を現代のドイツを舞台に描いたこの作品は、それ故水の持つ美しさも仄暗い恐ろしさも見事に描ききっている。
ちょっとした日常から少しかけ離れたところに存在する、人の理とは少し違う世界が、水を通して見えてくる。水槽もプールも湖も、そこに湛えられているのは全て同じ水という物質である。水を通してすべての世界が繋がっている、それがこの作品における理だ。そしてそこに、水の精の名を持つ女が介在することによって、関わる人たちの運命が変化していく。
静かでどこか不安げな響きを持つピアノ曲も相俟って、現実のはずなのにどこか水を通して見るような曖昧な世界が、そこに広がっていた。
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きりんさんのコメント
2021年7月5日
よしえさん初めまして、
ちょっとホラーも感じる幻想文学がお好きなら
「記憶の棘」(2004年、ニコールキッドマン)オススメです。
僕のレビューはURLを書いたため削除されてしまいましたが、なかなかの作品です。ご機会があれば。
よしえさんのコメント
2021年4月7日
大作でもない、本当にこじんまりとした作品ですけど、こういった丁寧に作り込まれた映像作品はいいですよね。水が綺麗に全てを繋げていて。
個人的にはナマズのグンターがすごくキュートで好きです。
talismanさんのコメント
2021年4月7日
とても素敵なレビュー、拝読しました。確かに、水槽、湖、川(ありましたっけ)、プールと、全部、水で繋がっていますね。ベルリンもかつては沼地で湿気たっぷり地帯。まさに19世紀ドイツロマン主義