17歳の瞳に映る世界のレビュー・感想・評価
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かつて、このシーンを、こんなに詳しく描いた作品はあるか
望まない妊娠をした17歳の高校生と従姉妹を通して、過酷な現実をドキュメンタリー風なタッチで描いた映画。
タイトルだけで想像したら、青春ロードムービーかなと思われがちだが、ズドンと重いモキュメンタリー作品だ。
特に元々の映画のタイトルにもなっている、中絶手術時のソーシャルワーカーとの対話がリアル。(本物の医師も出演してるとか?)手順もだけど…。
今までここまで詳しく、このようなシーンを描いた映画はあっただろうか。
それまで従姉妹にも本心をあまり見せず、能面のようだった彼女が、初めて素の自分を現す。望まぬ妊娠への恐怖、今すぐ逃げ出したい程の強い不安、自分を取り巻く社会への怒りが伝わる、ひとコマだ。柱に寄りかかり、2人で手を繋ぐ場面も胸が痛い。
弱音を吐いたら崩れ落ちてしまいそうで、無理して強がっているのが痛々しいほどわかる。
若い女性だけでなく、男性にも観て欲しい映画ではある。社会に向けて、命に対する警鐘をも鳴らした作品なのだろう。
タイトルなし
タイトル原題をそのまま邦題にできなかったかなと思った。冒頭の歌がパンチがあり、ヤジの「雌犬」にも深い意味がある。DVの相手は誰かはわからないが、質疑が深まっていくシーンは圧巻。
ニューヨークで知り合う男の子も、性的関係なしに友達として助けてくれることはないんだと思うと、本当に女性にとってこの世界は絶望的。
パンフを読んで、アメリカでは、ハートビート法によってもっと追い詰められていると知り、戦慄が走った。
他の映画評は、女性の日常的な暴力や痛みにいまいち鈍感な印象を持つ。でも、世界が敵対的であるからこそ、このちょっとした旅の冒険性は輝いているし、連帯や痛みの共有や助けてくれる人の行為も輝く。
PECK ME!
ペンシルベニア州ノーサンバーランドに住む17歳の女子高生が妊娠し、保護者の許可が不要なニューヨークへ堕胎しに行く話。
妊娠に気付き堕胎しようと考えるも、あまり口数は多くなく友達も殆どおらず相談出来る相手もいない主人公が、同じスーパーでバイトをする行動力と察知力の高い従姉妹と共にニューヨークを訪れるというストーリー。
当然お金も大して無いし、ほぼ行きあたりばったりで訪れたニューヨークで直ぐに病院を訪れるけれど…。
たった数日のことだけど、じっくりとゆっくりと主人公の機微をみせていて、感じるものはあったし、カウンセラーとのやり取りでは、オータムの本心が垣間見えてこのやり取りはかなり良かった。
ただ、行動力と察知力の高い従姉妹の気付きや気遣いに甘えること頻りな主人公にちょっとイラッと。何なら生贄かよと。
まあ、それだけ仲が良く信頼関係のある2人なんだろうけど、従姉妹が主人公を頼るところがないからね…。
それなりには面白かったけど、あくまでもとある少女オータムの場合という感じだし、成長物語でもなくイマイチスッキリしない部分も多かったかな。
タイトルから、夢のような世界を想像してはいけませんよ、ちなみに。
これは見る人の立場によって受け止め方が違いそうな映画だ。大昔の自分、数年前に娘が、もし同じ立場になったら、やっぱりこんな感じの危なっかしい旅をしそうだ、、、と思うと胸が痛み、正直見ていて心地よいものではなかった。
出てくる男たちの心が遠い! 分かり合えないし、わかってほしくもないような人たちしか出てこないのだ。
この子たちの住む街は、比較的貧しい白人と共和党支持者が多いのかな。(ちなみに、『ブックスマート』に出てきた高学歴・リベラル家庭出身の高校生二人組少女たちとは実に対照的だった。)
二人の少女の豊かな表情(クローズアップ多し!)、プロフェッショナルに徹した医療現場の女性たちのドライな言葉に救われた。(正確ではないけれど→)「自分で決めたことならいいと思う」というカウンセラーの言葉、柱を挟んでの少女二人の切ない指きり、復路で初めて見れたオータムの寝顔、、、。
さあ、帰郷後はどうなることやら、、、というタイミングでジ・エンド。
想像する余地を贈られた気分で立ち上がった。
そもそも相手は誰なの?父親じゃないよね、まさか、、、(祈)
少女の妊娠、中絶をリアルに描く
2人の少女が初めてNYを訪れる。本来であれば初めてのNY、ワクワクするはずの旅路だけど、ある切実な事情により重く、辛く、過酷な旅となる。
望まない妊娠をした17歳のオータムは、親の同意が不要のニューヨークで中絶するために従姉妹のスカイラーとバスでNYへ向かった。
初めてのNY、初めての妊娠、中絶、、、
彼女たちの瞳に映る世界は魑魅魍魎だ。
いくら性教育で避妊についての知識を教えたとて、避妊に対しての十分な理解や知識も、はたまた子を宿すといった事がどれほど神秘的で尊いことかさえも、10代の子にはまだ理解することが難しい(妊娠がわかった直後に、安全ピンで鼻ピアス開けちゃうところとか、オータムの心情をうまく描いている)。
また本作での印象として妊娠、妊娠検査から中絶までを比較的リアルに描いている(クリニックによっては12週以降は中絶できない、それ以降は二日間による比較的大変な手術など)。淡々と辛い現実が描かれる中、とりわけ唯一の光が従姉妹のスカイラーの献身的な姿ではないだろうか。自分にはこれっぽっちも得などないのにオータムの為に文句一つ言わずに寄り添う姿、その上ナンパ男に身体を張ってお金を借りる姿は印象的だ。
望まない妊娠、性行為の強要、暴力、今この瞬間も日本で、世界で、オータムのような少女たちが苦しんでいる。親に相談できるならまだしも、親にも誰にも相談でき無いが故に悲惨な結末を迎えることだってある。
親子で、学校をはじめとする教育機関で積極的に本作が鑑賞できる機会が与えられたらと、望まない妊娠から少女たちを守ることに少しでも繋がるのでは無いかと思う。
この世界をあなたの瞳にも映してくれ
17歳の瞳に映る世界、めっちゃ過酷。夜が夜というだけでハザードで、朝が来るとほっとした。
出てくる男性キャラがそろってクズなので、いくらなんでも極端な描き方だと思う人もいるかもしれない。でも私の瞳に映る世界も、わりとこんな感じだ。ここまで高密度にひどいことがつまった日常ではなかったけど、似たようなことがもうちょっと少ない頻度で起きる日常を、私も若い頃には送っていた。
バスで乗り合わせてしつこくライブに誘う線の細い若い男。こういう人は本当にいる。結構いる。金に困った“女”を見つけるとラッキーと思う人。金に困った“人”を見てそんなふうに思うのがどうかしているってことに気づく日はきっと来ない。自分が何をしたのか永遠に知ることがない、幸せな畜生だ。
駅の丸い柱を挟んだオータムとスカイラーのシーン、いろんな感情がかき立てられて泣けてくる。
スカイラーが不自然なぐらいオータムを助け寄り添うのは、彼女自身が誰かに助けてほしい寄り添ってほしいと何度も願ってきたからだと思う。彼女に彼女がいてくれて、本当によかった。パン屋でパンをちぎって分けて食べながら「ダンゴムシみたい」と笑い合うシーンも、心に残る。
原題の「Never Rarely Sometimes Always」も秀逸。
NEVER
RARELY
SOMTIMES
ALWAYS
とスクリーンに縦に並んで表示されて、後でこのタイトル通りのセリフが出てきたとき、この無機質な選択肢を目の前に並べられた17歳の回答やリアクションに、歯がみした。
好き、というのと違うけど、忘れがたい映画。
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