「この映画に出てくる男性はことごとく…(本文参照)」17歳の瞳に映る世界 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画に出てくる男性はことごとく…(本文参照)
今年85本目(合計149本目)。
toho系でしかやっておらず、最近ご無沙汰していましたが行ってきました。
さて、この映画は元のタイトルが "Never Rarely Sometimes Always" で、「頻度を示す副詞」が4つ並んでいます。それが日本では「17歳の瞳に映る世界」というタイトルになっていますが、元のタイトルは映画内で重要な意味を持っており(下記参照)、あながちこちらの日本のタイトルでも間違っていないかな…と思います。
日本もアメリカも、どこも「望まない妊娠」というのは、やはり存在します。そしてそのとき問題になってくるのが中絶です。本人に帰責性がない場合(事件に巻き込まれた等)は比較的寛容なほうですが、アメリカでは州によって、妊娠後の週が一定数過ぎるとダメという規定があるようで、その「中絶ができる州」まで女性2人(17歳)が旅立つ…というストーリーです。
映画内では明示的な描写はありませんが、主人公は男性から「望まない妊娠」を強要されたものと解せます。すると、彼女から見た目線は「どの男性も汚らわしい」存在になってしまいます。映画内でしつこくメールアドレスを交換しようと迫ってくる青年(もっとも、この人はよこしまな考えを持っている。詳細省略)はもちろん、ただ単に手荷物検査をするだけの男性なども、必要以上に「彼女目線では汚らわしい」存在なので、どうしても「汚らわしい」存在として描かれています(そして、映画内で、彼女に手を差し伸べる男性はまったく出てこない)。
妊娠や中絶をめぐる議論は、日本もそうですが、一般的には暴力など本人に帰責性がない場合は認められることも多いし、それは海外でもそうです。ただ、宗教信仰が日本よりも盛んなアメリカ・ヨーロッパでは、宗派ごとの違いから「宗教が妊娠を許容・禁止」している場合もあり、さらに複雑にします(当然、こういう場合、信仰の自由なんていうものは何ら考慮されない)。
くしくも日本は近々、民法が改正されて男女とも18歳から名実ともに「成人」になります。17歳は(現行でも改正後でも)「未成年」ですが、実際には「成人に準じた扱いを受ける」人たちです。彼ら・彼女らの決定権をどこまで親が許容するのか、また、もっと大きい、中絶の在り方(濫用的に使われるのはまずいが、望まない妊娠を許容することも、またできない)という倫理的な面を問うており、映画自体は架空のお話ですが、日本でもアメリカでもどこでも起きてもおかしくない話であり、明確に問題提起することなく、「自分だったらどうするのだろう?」(男性は妊娠しませんが…)という問題提起がありうることは明白で、その点でも考えさせるところが多いです。
なお、映画内でゲームセンターに行って、ニワトリと○×ゲーム(3×3のもの。先手後手が最善を尽くせば、引き分けになる)をするシーンがありますが、あれに宗教的な意味合いがあるのか、あるいはアメリカの何らかの文化的な事項の示唆なのかは、鑑賞後色々調べてみたのですが、不明でした(もしかすると、何もないのかも)。
採点は、下記が少し気になりましたが、大きな傷ではないので、5.0に切り上げています。
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(減点0.1) 明確に翻訳されていない部分(訳漏れ)がそこそこあります。病院(性質上、日本でいう産婦人科)の前で抗議する人たちが叫んでいる内容(おそらく、趣旨的に中絶反対、賛成という趣旨?)にはじまり、中国語の看板まで出る(国際都市なので…)のですが、翻訳がなく(漢字を追いかける限り、「お手洗いの後はよく手を洗いましょう」というようには読めるが…)、ちょっと不親切かな…とは思いました(ただ、理解を決定的に妨げるほどとは言えない)。
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(※参考) Never Rarely Sometimes Always とは何か?
・ 病院などで、体調管理の観点の問診票で、「次の質問に回答ください」というときに、例えば「あなたはよくタバコを吸いますか?」というような質問があります(日本でもありますよね)。そのとき、ここでは「まったく吸わない、まれに吸う、時々吸う、いつも吸う」から選ぶわけです。元のオリジナルのタイトルは、そこから来ています(彼女たちが病院に行くことは、ネタバレでもない)。
このとき、5択、つまり「普通」のような選択肢を作ると、そこが多くなってしまうことが経験則的によく知られています。そのため、無難に選ばれやすい「普通」を排して、このように4択(または、6択)のようにすることが、しばしばあります。
3×3の相手がニワトリの件ですが、英語では「bird-brained」=「鳥のごとく脳みそが少ないマヌケ」って言う意味なので、「マヌケに負けるアナタはさらにマヌケ!」と言う挑発。それ以上の意味や含みは無いと思います、多分。