劇場公開日 2021年7月16日

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「男性の気持ち悪さと女子の友情」17歳の瞳に映る世界 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5男性の気持ち悪さと女子の友情

2021年7月19日
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不快なだけ、疲れた。

(一度もない めったにない 時々 いつも)

やるせなくなる。柱越しに顔も見ず手を、指先をつなぐシーンがやばかった。互いのことを想うからこそ黙ってそうしていて、グッときた。世界のリアルに敗れた風に見えても、それを利用する。人の振り見て我が振り直せ、ものすごくやるせない気持ちになってしまった。ただ、それでも主人公二人の、イトコという親戚関係ではあるものの、友情やシスターフッドに少し救われた。この中絶の旅で何かを学び感じ取り、危機を乗り越えてまた強くなってほしい。勉強にもなる。

好奇の目に晒されては都合よく搾取される十代の女性性と、NOと言えない女性の心理や状況シチュエーション。声にならない叫びや表面化しない心の傷跡。絶えず胃のキリキリ締め付けられるような感覚、居心地の悪さだけど、その分グイグイと引き込まれてしまう自分がいた。しかも、本作に出てくる男性描写は皆、何も特別ものすごく邪悪な描き方をされているというわけでなく、あくまで語弊を恐れずに言えば日常の延長線上にあるようなもの。だから余計にふとしたときにゾッとしてしまう。
どうしても早熟な印象のあるアメリカのフィラデルフィアとNYが舞台ではあるものの、日本人的な印象を受ける粘着質な気持ち悪さで虫唾が走った。何気ない一挙手一投足に滲み出る下心は、向こうでも同じこと。ややもすれば他人事じゃない。真摯に好きな気持ちなんて微塵もない性欲むき出しの成人男性が、ティーンの女子をクドき、手を伸ばし、抵抗されないのをいいことに欲望の捌け口のようにぞんざいに扱うさまは非常につらくなる。どのカットにもしっかりと意味を感じて、引き込まれた。その時々の気持ちや居心地悪さなんかも伝わってくるよう。

その時々瞬間に感じることを大切にする。日本では同じ週公開『プロミシング・ヤング・ウーマン』同様、男嫌い・男性恐怖症になってもおかしくないくらい強烈な表現の可能性と責務がガツンとくらう。女性の社会進出・平等が進んできたとか、ハラスメントへの意識が高まってきた等とは言っても、現状はまだまだこのようなもの。世の中はまだまだ生きやすくなど無い、むしろ生きにくくすらなっている気もする。そうしたヘビーな役どころを演じた主演二人の演技と関係性が、本作のエリザ・ヒットマンによる演出脚本をさらに高める。克明かつ繊細に描いては浮き彫りにし、肉薄するような挑戦。真に価値のある作品。この映画を見なかったことになんてできない。

今年映画館鑑賞40本目?

とぽとぽ