劇場公開日 2023年12月22日

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「この運命的な川辺でしみじみと沁み渡っていく感情」ファースト・カウ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この運命的な川辺でしみじみと沁み渡っていく感情

2023年12月28日
PCから投稿

好みが分かれる作品だろうとは思う。せかせかした日常を送る我々にとってまず必要なのは、ケリー・ライカート監督が描く開拓時代の気が遠くなるほどスローなペースにどっぷり身を浸すこと。時計など気にせず、この永遠に続くかのような会話速度に身を預け、森の静寂と暗闇をこよなく愛し、そこで育まれる彼らの関係性を幾ばくか微笑ましく感じ始めたなら、その頃合いからようやく、我々はこの世界の住人なのだ。川面をゆっくりタンカーが過ぎていく。その200年前、当地で初めての雌牛がいかだでゆっくりと運ばれていく。そのミルクを用いて男たちがスコーン作りで大成功を収める・・・一連の顛末は「わらしべ長者」さながら。と同時に、冒頭の「結末」に向けひたすら流れ、導かれていくこの寓話は、恐らく開拓地オレゴン史上初の友情物語。骨格標本に肉付けしていくかのように丹念に織りなされるストーリーが美しく、唯一無二で、しみじみと沁み渡っていく。

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牛津厚信