「ミルク泥棒のお話」ファースト・カウ カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ミルク泥棒のお話
西部開拓時代のオレゴンの山深い土地で仲買人の牛からミルクを盗み追われるアメリカ人のコックと一儲けを企む中国人移民の話。
一度観てみたかった噂のインディペンデントの名匠ケリー・ライカートの作品。
当時の雰囲気と時間の流れにうまく合わせるかのようにお話をゆっくりと進めて行き、多くのカメラを使わず、説明も少なく、登場人物や背景をじっくりと丁寧に描写していく。
今の我々からするとたかがミルク泥棒、ほんのささやかな夢のために行ったことだが、当時のこの土地では富の象徴である最初の牛から採れる貴重な食材、また別の土地で成功する事はそんなに簡単なことではなかったのだろう。
そんな事を考えながら冒頭の人骨を思い出すと、名も知れない多くの普通の人達の上に今の我々の生活があるのだろうとなどと思ってしまう。
あの人骨も彼等のものと明確に言っていないところも良い。
キングはあの後うまく逃げ切り、別の土地で成功しているのかも知れないとか想像する余地を残してくれる巧みさも伺える。
好きな人にはハマるのだろうが、ワールドマーケット向けの誰でも楽しめる作品ではないため、スピーディーな展開や刺激に慣れてしまった人達には受け入れ難い作風だと思う。
そう言う自分も他の方達のような高評価までには至らずで、大人になってからもう一度チャレンジしてみたいそんな(監督の)作品でした。
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