「結婚して5年、一度も離れたことはないわ。今回が初めて。」逃げた女 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
結婚して5年、一度も離れたことはないわ。今回が初めて。
久しぶりに会う中年女性たちのたわいのない雑談ではじまり、それが続いて何事もなかったかのように終わる映画。思い起こせば、セリフや家の中の各所にはメタファで溢れていた。もしや?という想像は謎めいた疑念に変わる。
だいたい、「逃げた」とは何からか?5年連れ添った夫から?知らずについているであろう嘘から?
原題「The Woman Who Ran」、Ran?それ、こっそりとじゃなくて逃亡に近い?
映画の中に流れる空気と熱量の静かさに比べて、不穏な背景を感じてしまう。そもそもガミは、結婚してるのか?
そう惑わされつつも、どうでもいいよそんな話、と思う。その時ふと自分は、そういう男なんだと気付く。例えば、家に帰った時に妻の友人が来訪してたとして、おそらく自分は「ゆっくりしていって」と笑顔でいい夫を演じるだろう。「お邪魔してます」とこちらも笑顔で返す妻の友人と妻は、すぐさま真顔に戻って、話の続きをするだろう。その話の内容は、たいてい何かから逃げたい中年女の身の上話だ。
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