「前代未聞のプロジェクトの序章に過ぎない」DAU. ナターシャ 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
前代未聞のプロジェクトの序章に過ぎない
映画とは何かを改めて考えさせられる作品。“ソ連全体主義”の社会を前代未聞のスケールで完全再現し、オーディションで選ばれたキャストたちは、実際に再現された都市で約2年間にわたって生活したという。
さらに生物化学博士やKGBの元大佐まで出演していて、本物のオーラと迫力によって、これまで見たことがないくらい、異常な緊張感が画面から伝わってくる。もはや演技ではなく、作られたリアルな世界の中にカメラが入り込んだかのような錯覚に陥り、我々には伺い知れない独裁政権による圧迫感、そしてあまりにも衝撃的なバイオレンスとエロティックな描写は、これが映画であるということを忘れるほど。
作られた世界とリアルな世界の境界線を壊し、人間の本質に迫ろうとするこのプロジェクト。本作はまだ序章に過ぎず、続く「DAU. 退行」の上映時間はなんと全9章の6時間9分だという。どのように全貌が明らかになっていくのだろうか。
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