「いちばん大事なことは私たちが「同胞」を見捨てないこと」日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
いちばん大事なことは私たちが「同胞」を見捨てないこと
母国に見捨てられそうな人びとを、一つひとつ丁寧に希望するもとへと繋いでいく、そんな気の遠くなるようなプロジェクトを追いかける優れたドキュメンタリー。
太平洋戦争中に彼らを誘いこみ、そして見捨てたのは日本軍であり日本国政府ではないという行政や司法の論理。そうだとしても、「国民の保護は国の義務」であり、それが担保されないなら私たちは安心して海外に旅行に行くこともままならない。
一番の解決すべき課題は、「棄民」を行った日本政府の過去の責任を追求することではなく、問題に無関心な私たち自身の意識を変えていくこと。
対象の人たちはどんどん年をとっていくので、解決のための時間はあまり残されていない。
河合弁護士が何度も口にするように、決して問題そのものの「消滅」で終わらせてはならない。
本作であらためて実感したのは、ドキュメンタリー映画の「映像の力」。
映像の力で多くの人に問題をわかりやすく伝え、人の感情を動かし、行動をうながす。メディア、司法、政治を通して少しずつ小さな水紋を広げていく。
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