「まだ君を総理大臣にできる日本か。」なぜ君は総理大臣になれないのか ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
まだ君を総理大臣にできる日本か。
このようなタイトルの作品を観た後で、問いたくなるのは
「まだ君は総理大臣になりたいのか」なのだが、問われた
彼の答えはイエスだった。そうでなければ政治家を続ける
意味がないとハッキリ答えている。ではなぜなれないのか。
彼がおよそ政治家らしくないからだと思った。その、らしく
とは私たち国民がずっと見てきた金と権力に彩られた上昇
志向の強さで党利党益に貢献し、出世して知名度を広げる
貪欲さだ。失礼ながら彼には全くそれが無い。志は高くも、
地盤・看板・カバンなしで戦う彼の武器ってじゃあ何なの。
理想や信念を失わない彼が、家族を巻き込んで進む姿には
涙しか出ない。彼を支持し応援し、素晴らしいスピーチを
こなす教授といい、彼にはその人間性による支持者が多い。
大島新監督もその一人だ。選挙で彼を落とす有権者がいる
なんて信じられない、なんて擁護したくもなってはくるが。
冷静に息子を見つめる父親の意見、幼い子供を預けてまで
選挙活動に尽力した妻の意見、17年間にも及ぶその記録は
両親の老いと娘たちの成長もしっかりと描き出してくれた。
彼らこそ、今更だけどまだなりたいのかと聞きたいだろう。
家賃4万7千円の住宅で、油揚げを旨い旨いとほうばる彼に。
彼が“統計王子”の愛称で呼ばれた国会での質疑は、以前に
見た記憶がある。素晴らしいツッコミ演説に惚れ惚れする
一方で、苦悩を抱え勢いを失っていく姿には溜息が漏れた。
本来だったら、彼のような政治家が理想なのかもしれない。
だけど世の中、理想どおりに運ぶものなんてなんにもない。
大変失礼ながら、私はその顔相にも弱さを感じてしまった。
自民党の平井卓也氏と並んだその姿には、まるで悪代官に
仕える手付のように見えてしまったほど(ごめんなさい汗)
欲の無さがもう顔面に出てしまっていた。この人は相手を
蹴り倒したい!などと思ったことがあるんだろうかと苦笑。
つまり彼を見て、応援したくなったり、涙を流したりする
私たちが彼に希望を見いだして、本当はこういう人に未来
を託したいと思っている。だけどなかなかそうはいかない、
実現不可能だと分かってしまっている現在。何とかせねば
という監督の問いに賛同し、じゃあもっと考えてみようと
いうコロナ禍に相応しい作品なんじゃないかと思えるのだ。