劇場公開日 2020年11月13日

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「前例はある」シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい! kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0前例はある

2020年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 エンドロールにジェラール・ドパルデューの映像が出てきたのでビックリ。やっぱりカンヌでの男優賞がきいたのか、それとも自前の鼻でも役を演ずることができると評価されたのか、それは不明だ。

 フランスにおける有名な戯曲の裏話。どこまで本当なのかわからないけど、同じくエンドロールに本物のエドモンをはじめ、コクランやマリア、サラなども登場していることから、ジャンヌ以外は実在した人物なのだろう。

 崖っぷちの劇作家エドモン・ロスタンは大物俳優の誘いによって脚本をまかされるが、タイトルだけは決まったものの一向にアイデアが浮かばない。そんな折、親友の俳優レオの恋するジャンヌに詩的な言葉を与え、しかもラブレター代筆によって愛をつかもうとさせる。それによって脚本のアイデアが浮かぶのだが、年末の公演が刻々と迫り、切羽詰まった状態で猛スピードで台本を仕上げていく・・・といったストーリー。

 このジャンヌというマドンナを登場させることで、映画が戯曲以上に締まった仕上がりになっていました。本来なら出資者二人が元娼婦のマリアを使ってほしいと要請したことから、ずいぶん老けたヒロインだなぁ~と感じていたけど、やっぱりそこは映画向けにもうちょっと若いヒロインを登場させたわけだ。

 締め切りが明日まで!とか、前半は目まぐるしく展開するのですが、中心人物を回り込んで撮る演出によって眩暈がするほど凝っていました。音楽の使い方も前半と後半は全く違う。リハーサル時のボレロもいい感じ。

 第1幕、第2幕と書き上げながら、舞台稽古も進んでいき、これがハッピーエンドになるのか?とコクランに指摘されつつ、4幕、5幕があるとやり返すエドモン。こうやって劇が変化してのだという過程がとても面白い。伏線としても酒場の黒人店主や“奈落”の使い方なども最高だったし、娼館で出会う結核のチェーホフを登場させるのも上手い。

 黒人店主役のジャン・ミシェル・マルシャルさん。2019年に亡くなっていたのですね。もっと色んな演技を見たかったです。

kossy