「ラストに驚愕。かなり面白い。」ストレイ・ドッグ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストに驚愕。かなり面白い。
ノワール感漂う雰囲気と迫力のあるニコール・キッドマンの演技。過去を回想する形で徐々に明らかになるストーリーテリングだけで充分すぎるほど面白かったのに、ラストの衝撃でぶっ飛ぶほど面白くなったのには驚いた。
見えているストーリー展開はこうだ。
まず他殺体が発見される。改造銃で射殺されたようだ。主人公が過去に因縁のある相手が再び動き出したらしいことが分かる。
改造銃を扱う男のところへ行き銃を押収。この段階では凶器の出処を押さえたように見えるのがうまい。
時を同じくしてインクの付いた1ドル紙幣が主人公の元に送られてくる。その紙幣を調べてもらい主人公が追う男の仲間の居場所を聞き出す。
こうして順番に潜入捜査中の仲間の元を訪ねて行き目的の男までたどり着くサスペンス。
サイラスはなぜ1ドル紙幣を主人公に送ってきたのか。潜入捜査中に何があったのか。娘の父親は?と、多くの謎があり面白い。
中でも送られてきた1ドル紙幣が興味を引く。送り主がサイラスだとするならばサイラスもエリンをおびき寄せようとしているように思えるからだ。
サイラスがエリンと会いたい理由はなんだ?というのが最大の焦点になる。娘の父親がサイラスなのかもしれないという考えが頭をよぎる。
しかし本当のストーリー展開はこうだ。時間軸がいじられていて見えている順番と実際の順番が違う。
まず娘に恋人ができる。娘を町の外に越させるため過去の強盗時に手に入れた紙幣を使おうと決心する。しかし紙幣には追跡用のインクが付着していて使えなかった。その中から使えそうな金を娘の恋人に渡し別れされる。
この頃、改造銃を無理矢理押収する。後のサイラス殺害に使うつもりで手に入れたのだ。
今までサイラスについての手がかりを持っていなかったエリンは手元のインク付きの紙幣を足がかりにサイラスを探し始める。自分の紙幣を自分宛てに送りサイラスが再び動き出したように見せかけたエリンはFBIの知り合いに情で訴え昔の仲間の居場所を聞き出す。
こうして順番に仲間を辿ってサイラスまで行き着くのだ。
エリンはサイラスに復讐を果たし紙幣をばら撒く。この瞬間に、冒頭の他殺体がサイラスであったことが分かり、見ていたストーリー展開と本当のストーリー展開が違ったことを知る。
なんてことだ。上に書いた謎なんてものは最初から存在すらしていなかったのだ。時間軸をいじることでありもしない謎を創出したわけだ。
エリンは娘の父親であるクリスが殺されてしまったことで荒れに荒れていた。娘の成長と、手を付けていなかった手元の紙幣をきっかけに過去の精算に動き出す。
復讐以外にやり直せる方法を見出せなかったのは悲しいことだが、かつての潜入先での仲間は誰もあのときに囚われたままだったのかもしれない。