劇場公開日 2020年6月5日

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「希薄なヒロイン」ANNA アナ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0希薄なヒロイン

2020年12月14日
PCから投稿

主人公をつとめる女優が、薄い気がする。モデルとしては、なんの文句もない、しなやかな銀髪美女だが、ひっかかるところがない。端正だけれど目を離すとすぐに顔を忘れる。

Sasha Lussのせいではないけれど、そのミスキャスト感をひきずられた。
雑感に過ぎないが、ベッソンは、もっとクセっぽい人を選ぶような気がしていた。
アークエットもポートマンもヨハンソンもデルヴィーニュも、クセっぽい──とはニュアンスが異なるけれど、画のなかで、しっかりとした濃さを主張できるヒロインだった。

その「濃さ」が、ANNAにはほぼない。かなりの違和だった。なぜこのひとが──という印象が、消えなかった。

とはいえ、アクションに入ると、かんぜんに観る者を掌握できる。
それを見ていたら、もしかすると薄いキャラクタライズの女性が、ギラギラの激しさでアクションをしたら、面白い絵になるかもしれない──とベッソンは踏んだんじゃなかろうか、と思った。──なっていた。

信者の多いベッソンだが、ベッソン好きには二極化がある──と個人的には思っている。
ベッソンといえばレオン、はメジャーで、おそらく大多数がそうであろうと思うが、ベッソンといえばグランブルー──のひとも少なくないと思う。わたしも後者である。

経年のあいだに、ベッソンは、アクションのじょうずな監督──という世評になっているように思われる。
韓国ノワールが台頭したこともあって、余計ごっちゃになった。

だけど先達はベッソンだったし、もともとベッソンの真価はノワールなアクションじゃなかった。
非情で釣る監督ではなくて、がんらいペーソスを描くひとだった。

ロートルがベッソンを愛する理由は、レオンやグランブルーの、やるせない哀感──だと思われる。

個人的には、すごく好きな監督というわけ──でもないのだが、ロートルがベッソンの新作に希求してやまないのは、かっこいいアクションとかではなくて、レオンやグランブルーの哀感──ではなかろうか。

けっきょく、ルーシーやアナを見て、ロートルはつぶやく。「いやだからベッソンさん、これでなくて(いや、これもわるくはないんだけれど)レオンとかグランブルーみたいなやつ見たいんですよ」と。
わたしもそうだった。が、楽しめた。

ロートル「昔からの愛好家、長い間のファン」

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津次郎