劇場公開日 2020年6月5日

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「助演陣の健闘が眩しい!後出しジャンケンが飛び交う21世紀版『ニキータ』」ANNA アナ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0助演陣の健闘が眩しい!後出しジャンケンが飛び交う21世紀版『ニキータ』

2020年6月12日
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鑑賞方法:映画館

舞台は冷戦時代のソ連。ヤク漬けの自堕落な生活から抜け出そうと海軍に志願したアナは諜報機関KGBの職員アレクセイにスカウトされる。アレクセイの上官オルガに命じられた過酷なテストを通過したアナはモスクワでモデル事務所にスカウトされパリに呼ばれるやいなやトップモデルへと駆け上がるが、もちろんアナの使命は別のところにあった。

TOTOと同じく作品名にとにかく女性の名前をつけることにこだわるベッソンは一本スジの通ったフェチ男なので、今回主役に抜擢されたサッシャ・ルスの全身割り箸みたいな華奢な肢体がこれでもかと舞い踊る。そしてとにかくウィッグを変えまくる。涙でメイクをボロボロにする。なんかもうどっかで観たようなフェチ映像だらけ、原点回帰したようにエロもグロもかなり思い切った描写に徹していて暑苦しい。ひたすらヒロインがいたぶられるという意味では『ニキータ』によく似たトーン、というかこれって韓流『ニキータ』と呼ぶべき傑作『悪女』に対するベッソンなりの回答なんじゃないかと思います。しかし『悪女』ほどの斬新なカットはどこにもなく、ひたすらベッソン印の安っぽい後出しジャンケンの騙し合いを畳み掛ける辺りはよく言えばお家芸、悪く言えばワンパターンで正直食い足りないです。

しかしそんなやっつけ仕事感をたった一人で払拭するのが冷酷な上官オルガを演じるヘレン・ミレン。最近愛嬌のあるキャラを演じることが多かったですが本作ではやさぐれた元スパイを哀愁たっぷりに演じていて本作をC級からB級に押し上げています。ルーク・エヴァンス、キリアン・マーフィと言ったバイプレイヤーのサポートも手堅く、中学生の寝言のようなストーリーにも陰影が宿ってそれなりに楽しめる作品になっています。

1990年なのにラップトップにUSBジャックがあるとか、まだMS-DOSの世界なのにディスプレイに表示される録画映像の解像度がえらい高いとかあちこちにポッカリ穴があいているマヌケ仕様をニヤニヤしながら楽しむのも一興、いつも通りのベッソン節をゲップが出るまで堪能出来たので個人的には満足です。

あと2019年度個人的ベストワン映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』で主役のイヴシュキンを演じたアレクサンドル・ペトロフがものすごくどうでもいい役で出ているのにビックリしました。あんな傑作の後にこんなバカ映画に出なくたっていいじゃないかと思ったんですが、ベッソンに抜擢されたなら断れないということでしょうか。

よね