「余命宣告モノは好みではないが面白く見た」グッバイ、リチャード! asicaさんの映画レビュー(感想・評価)
余命宣告モノは好みではないが面白く見た
余命宣告された男の描写がリアルである必要はないとは思う。
もし宇宙人がいたら。
もし空が飛べたら。
もしドラえもんがうちにもいたら。
そういうファンタジー的に見るのがいいのだろうか。
癌患者で余命宣告される人は
大抵の場合それ二つが同時にやってくる。
癌の罹患がわかったときに手遅れであるために余命宣告が付いて来るからそうなる。
夫は2019年の自分の誕生日直前に余命宣告を受けた。
あと数週間後に控えた定年のために有給休暇の消化中だった。
当時長女が住んでいたイギリスを夫婦で訪れ、帰国後は次女と孫を連れて温泉へ。
その後、便の異常を訴える夫に、再就職後には思うように休みも取れないから病院に行って置いた方がいいよと私が言って、そうだなとやけにすんなり行った町の医院から紹介状を渡されて総合病院へ。
そこでの驚きの診断だった。
俺 半年で死ぬらしい。
あまりにあっけらかんとした口調で電話口の向こうから言う夫は、実感が湧かなさ過ぎていた。
すぐに駆けつけた私と再度診察室で聞いた話は、にわかに信じるには想像外過ぎていたが、その診断は医者からのものであって町中(まちなか)のインチキ占い師の物ではなかった事をその後徐々に思い知る。
その数ヶ月前に、仕事で付き合いのあった人が肺癌だった事をフェイスブックで知ったばかりだったのが
自分の家族にも降りかかって来たのかと思うと俄かに重い気持ちがのしかかって来た気がしたのだった。
肺癌の彼はまだ若く私たちより一回りは下だったが、最後に会った時にずっと咳をしていた事を思い出した。
咳にはやはり抗生物質がいいですよ、気管の炎症が原因の場合は。
なんて言った私に彼は、どんな薬も全く効かないんですと言ったのが今思えば癌の症状だった。
医師からの余命宣告など信じない、絶対負けない、そう言って温熱療法だの丸山ワクチンだのに奔走した挙句、半年もせずに他界した。
夫は 医師から
今は大腸癌には いい抗がん剤がありますからと言われ、それを使えば二年、
え?
使わなければ二年?
ではなく 使わなければ半年で使って二年。
そういう話を医者とする私に夫は
もうこれ以上詳しく聞くな と言った。
余命宣告の受け止め方もしくは受け止められない精神状態は百人いたら百通りだろうと思う。
だがこの映画のリチャードのような終末は
私にとっては 絵空事でしかなかった。
親友の彼が真摯に善人で
彼の死をその胸で受け止めていた事以外は。
それでもこういう題材を他人事として
見る事が出来る自分ではあるのだなあと
見ながら思ったのだった。