「北欧から届いた、奇妙な純愛映画」ブレスレス 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
北欧から届いた、奇妙な純愛映画
ボンデージに身を包んだ女性と、彼女がもたらす行為を恍惚の表情と共に受け入れる男性。思わず、一体何を見せられているのかと、こちらの方が顔を歪めてしまいそうになる。だが、物語を辿れば辿るほど、これが純愛映画に思えてくるから不思議だ。ではそこに描かれる愛とは何か。不慮の事故で亡くなった妻への愛?目の前のボンデージな女性への愛?それとも、もはや苦痛そのものが彼を癒すことのできる唯一無二の愛なのか?もはや正確な答えや境界すら曖昧になるほど主人公は沼にハマり「もっともっと」と求め続ける。興味深いのは男女が共に実社会で「癒す、治す」領域の職業に従事していること。この場所や行為は、彼らにとって自分の生業の延長線上にあるものなのだろう。そういった特殊な設定や人間描写が陰影を刻み、本作に奥行きをもたらす。さっきまで目を背けていたこの物語に引き込まれていく自分がいる。また一つ、奇妙で愛らしい北欧映画が生まれた。
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