劇場公開日 2020年12月11日

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「手段とアプローチはヒトそれぞれ」ブレスレス バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0手段とアプローチはヒトそれぞれ

2020年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

鑑賞予定ではない一本でしたが、なんか気になってしまい。

いやぁーーー、意外、意外な一本でした。
「こんな作品じゃないかな?」と想定したことがことごとく外れる私ですが、この作品は
180度外れました。  良い方に。

SMや倒錯世界を描くアンダーグラウンドな作品なのかなぁ?と思ってましたが、違ってました。
ある人間の喪失から「愛」に目覚め再生していく話(なのかな?)でした。

何かを求めることには罪はない。それがアブノーマルと言われる行為でも。犯罪じゃないしね。
SMに限らず、相手がいて成立することについてはお互いが求め合い、提供しあう。
そしてお互いがが共に求め合うことを提供し合えたらこれほどベストなことはない。
そして提供し合うことで心が満たされるのなら。
手段がどうであれそれが実現すれば、それは愛の形の一つなんでしょう。

「ブレスレス」

素晴らしい題名ですね。全てをつなぐキーワードです。
失った要因であり、再生の要因でもある。そして、現実世界での状況も表しています。
最愛の妻を感じるためのブレスレスであり、
息がし難いほど強い喪失感。それもブレスレス。
息をする、生きるために、ブレスレスな、状況をつくるという巧みな繋がり。
そして、その状況を使って絶望からどう解き放たれることを主人公が求めるのか?

SMプレイには信頼関係が必要って聞いたことがある。
この作品は徐々にその信頼関係が築かれていく様=愛が育まれていく様と勝手に
解釈しています。歪な愛かもしれませんが。
ラストの笑顔は全てを越えて得た境地なのでしょうね。
喪失からくる絶望から逃げるためにMとなったが、これからは生きるためのM。

また本作は映像はなかなかのものです。詩的かな?と思います。
人間の心情を描き出しているような場面の数々は、本当に悲しくも綺麗なのです。
確かになかなかのグロシーンはあります。ですが、それ以外は穏やかに力強く
描かれていきます。
脚本、演出も良いと思います。SMを前面に押し出すことなく「純愛」を描き切っているのでは?と思います。

しかし、SM経験をされていらっしゃる方がご覧になったら、全く違う感想なのかもしれません。

バリカタ