「これこそドキュメンタリー」ディエゴ・マラドーナ 二つの顔 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
これこそドキュメンタリー
・対象に密着
・充実した内容
・独自の資料をもつ
という点で、非常に優れたドキュメンタリーだと思う。
何度もマラドーナ本人からのコメントが入るし、話をナポリ時代に限定しているので内容がとても濃い。
時系列に沿っていて分かりやすいし、最初から最後までダレるところもなく、一気に観ることができる。
事情通の人にとっては、「誰も知らない」人生でも何でもないはずだが、セリエAやプライベートの映像を含めて、自分としては初めて観る映像に満ちていた。
映画は、バルサ退団と1984年7月のナポリ入団から始まって、6シーズン半の後のナポリ退団で終わり、そこに幼少の貧困時代と後日談が付け加わる。
このナポリ時代は、アルゼンチン代表も含めて、マラドーナの絶頂期である。
庶民派のマラドーナには、お高くとまったバルサよりは、ナポリという土地によほど水が合ったのであろう。
「10番」が活躍して、W杯優勝と、「イタリアの下水」と侮辱された弱小チームが欧州制覇をなしとげるという、絵に描いたようなストーリー。
同時に、マフィア(カモッラ)とのつきあいとコカイン摂取、認知拒否の子の誕生という凋落期でもある。
サッカーの映像を観ると、身体がどんどん肥満してくさまが克明に分かる。
そして、W杯準決勝でイタリアを破ったために、“情実主義”のイタリア社会からの攻撃にさらされてしまう。
英雄が一気に転落していくという、これまた、絵に描いたようなストーリー。
そのすべてが、映像を伴って紹介される。
もっと評判になって良い映画であるが、もうマラドーナも“過去の人”となったということだろう。
ガッツポーズがこれほど似合うサッカー選手もいない、と思った。