「愛の形は見た目ではわからない? Sweet to me.」SKIN スキン PtiNakiさんの映画レビュー(感想・評価)
愛の形は見た目ではわからない? Sweet to me.
2019年91回アカデミー短編映画賞を受賞した「Skin(2018年公開・上映時間20分)」...その短編映画を先に鑑賞をすることに...約20分に仕上げた時間の中に起承転結がはっきりとしたシナリオに加え、ラストが見ている立場や考え方の違いで人種差別との決別とも取れ、これからまたチェーンリアクションのような血を血で洗う泥沼の人種間の戦いが今まさに始まるともとれる内容が実に曖昧でなく、はっきりと二つの方向に分かれるシナリオとなっていた。
そして同名であり同監督による演出の本作...見る前にある懸念が頭に浮かぶ...アカデミー賞を受賞したからって、そのまま竹輪のように肉付けをしただけの安直なシナリオにしていないだろうなと....?
Burn that soil! Burn that soil!
No Nazi's, no KKK!
相反する人種同士のにらみ合いながらのアジテーション....これって見たからに子供の遊びの”花いちもんめ”じゃん、あれっ⁉ 皆さん肩組んでいるし..真剣な暴力的な場面なのに..フフッ
There's a threat to our people. And I'm here to say it's not because
we hate anyone else
I don't hate the Jenks, the niggers, the Muslims or the dykes.
I don't hate them. They have a right to live.
But we say,
"Not on our American soil!"
So maybe we should just....
make them leave!
この映画の主人公であるブライオンの育ての親であり、ネオナチを彷彿とさせる白人至上主義の小規模コミューンのリーダー、通称ハンマー・クレイガーの演説を聞けば大方、この方の主張や彼の行動の底流に流れる人格形成がわかる。
この映画の取っ掛かりとなるピットブルの愛称のある主人公のブライオンの亜流のような幾何学模様のタトゥーを入れた精悍とも言える横顔を見れば、それだけで好奇心をかき立てられるように映画を見たくなるのは人の人情といえる...それとも元来持っているピーピング・トム的性格からか? ともかく始め思っていた凄惨でギミックを使ったゴア表現のオンパレードの対黒人差別を描いた映画と思っていたが...
ストリートキッズだった者が犬のように拾われ、閉鎖された社会...小規模コミューンでの酒・ドラッグ・欲望だけで愛のない性行為・ただ肌の色が違うだけで意味も分からず人を差別し、暴力をふるう....人として何か大切なものを失い知らずにいた人間としての再起。
想像もできないある意味モンスターの純愛・ラブストーリー映画となっている。
Can I be honest?
You're on the FBI watch list.
I-I just don't.... I can't help you.
-Nothing? .... -No.
何も言わずに彼らの元を離れ、ジュリーと3人の義理の娘と暮らしたいが為に日本で言うハローワークにあたる ”An Employee Services” に行っても現実はとても厳しい...その上、彼らからの執拗で凄惨な”掟”がブライオンのわずかな希望も奪い去ろうとしていた。
この映画では612日をかけた実際にタトゥーの除去される経過とその痛みの様子が描かれていて、今はやりの芸能人のプチ・タトゥーなんてしようと考えている方は、この映画のシーンを見てからでも遅くはないかもしれません...まあ、そんな人は他人の忠告なんて大きなお世話さまなんてね?
この映画を見ていて、救いだったのが義理の末娘を演じていたコルビ・ギャネットさん。ごみ溜めのような映画の内容に動物を愛し、屈託のない笑顔を絶やさない、演技か?本人の気質か?宇宙人か? その演技に.....拍手 パチパチ
リアルな元ネオナチグループ、ヴィンランダーズソーシャルクラブに所属していたブライオンをイスラエル出身のガイ・ナティーブ監督が描くって、もっと差別主義者を偏った考えで描くのかと思えば2018年に公開された映画とは内容が大幅に違うけれども根底に流れる人種差別の偏見を訴える姿勢を持ちながら彼の生きざまをストレートに描き切っている演出が成されていると個人的に思える。ただしラストのシーンは少し曖昧さが気にかかる。
余談として...実際のブライオンとジュリーの対比した写真とリアルなブライオンの人物像を詳しく載せているサイトもあり、それとは別に映画の予算の大人の都合で主演のジェイミー・ベルのタトゥーを書き換えるお金が無くて数日間そのままで食事をしたりしているとスタッフすら近づかなくなったとこぼしていたそうです。