佐々木、イン、マイマインのレビュー・感想・評価
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もがいてる感じがいい
高校時代、友人たちの中心にいた佐々木。彼との思い出をたどりながら、うだつの上がらない主人公ゆうじの現在の姿を描く。
高校時代の思い出は男らしい雰囲気で、共感できる人も多いかも。自分の同級生でもすぐ脱ぐやついたなーなんて思い出したりした。でも、いつもみんなの中心にいる佐々木が抱える闇が徐々に明らかになって、それでも明るく振る舞おうとする佐々木の姿に胸が苦しくなった。そしてゆうじの現状だ。「そのうち」、「今はまだ」って言葉で物事を先延ばしにする姿にドキッとさせられる。
だからこそのラストの感動。最後に流れる、カラオケで歌った佐々木の歌もいい。結局どっちなのよ?とは思うが、どっちでもいいかと思える終わりだった。
ゆうじと彼女の関係とか、ゆうじの家族の話とか、もっと掘り下げてもいいところもあった。でも、なんか最後まで自転車で疾走した感じでこれはこれでいいのかも。
佐々木コールは俺たちへのエールだ!
私も一緒に佐々木の生き様を見届けた!
たまに、思い出すだけで胸が熱くなる映画に出会いますが、間違いなくその1本でした。
たった2時間なのに、奴らと同じ時間を過ごしてきたような錯覚に陥り、
佐々木なんていう見ず知らずの奴が、忘れられない記憶として私の心に焼き付けられました。
ラストシーンは劇場で体感したかった!
『ヴァニタス』の続編にあたる年齢層の物語かと思いますが、伊藤との決定的な違いは、佐々木は表現者であったこと。
悠二が立つ舞台とのオーバーラップが素晴らしいのですが、『ヴァニタス』の伊藤が『ロング・グッド・バイ』(テネシー・ウィリアムズ)の母親側の人間だったとすると、佐々木は誰に見せることはなくても絵を描き表現する者だった。
パオロ・タビアーニ監督の『塀の中のジュリアス・シーザー』に感銘を受けてから、ずっと考え続けていることなのですが、一言で言うと“人はパンのみに生きるにあらず”
佐々木は、理不尽な思いや押しつぶされそうな孤独、悲しみや怒りの発露を見つける事の大切さを知っていて、自分の為に絵を描くことで現実に踏みとどまれていたのだと思えます。
ギリギリの友に寄り添うシルバを演じる悠二は、佐々木のことを思い出しますが
むしろ、自分に役者になることを強く薦めた佐々木の方が、シルバだった事に気づく。
誰かに必要とされたくて、頼まれると断れない佐々木は、佐々木コールで一身に注目を浴び「逃げるぞ」と言う声に逃げて見せる。
それは、佐々木の願望を満たす瞬間であると同時に、小さな鬱積を持て余す奴らの発露であったに違いない。
お互いに必要なモノを交換し合う時間は異様な熱気に包まれるが、等価交換ではなかった。
シルバのような佐々木の優しさで成り立っていたのだ。
細川岳さんの演技が心に残ります。
佐々木の、冗談めかした話し方や、品のない食べ方、人懐っこい笑顔。
一つ一つがあまりにもリアルで、佐々木にピッタリの役者を連れて来たのか?と思うところですが
いやいや。細川岳さんって『ヴァニタス』の柴原ですよね?
全く別人で、演技力に驚愕。
特にお好み焼きを食べるシーンとパチンコ玉を渡すシーンの表情が最高
脚本にも参加してらっしゃいますが、エンドロールのスペシャルサンクス枠に“佐々木”のテロップを発見。
やっぱりモデルがいたってことでしょうか??
鈴木卓爾さんの父親も素晴らしい。
苗村さん(河合優実さん)のセリフから見える二人の関係が、また泣けます。
後半はもう、すっかり物語に入り込んでしまっているので、5人目の同級生の気持ちww
木村の家では「わ〜!良かったね〜!」と心から思えて胸が暖かくなったし、そこから一気に視点が数段上がっていく展開には、ただただ人間の営みの尊さを感じました。
「人間は裸で生まれてきて、死ぬときは服を着ている。生きてるだけで丸儲け」とは明石家さんまさんの座右の銘ですが
そんなのは佐々木らしくない!!
佐々木コールは、奮い立ちたい奴らへの佐々木からのエールだ!!
#佐々木、イン、マイマイン
佐々木は走るのが早い。
コロナの煽りで洋画の公開が手控えられる中。例年なら単館であったろう作品がシネコンに掛かってるんだろうなぁ、って思う事がしばしば。これなんか、そうですよねぇ。役者さんが、単館オールスターズw
荻原みのりさんの抑えた話し方が、ど偉くオンナっぽくて好き。小西桜子さんは、鮫島に続き二日連チャンなんですが、昨夜の彼女と同一人物なん?と言うくらいに別人w メイクと演技で別人になってしまうのって凄いです。
物語りは、同棲生活に終止符を打とうとする役者の男が、田舎の高校生時代を思い出す体裁で進められる青春グラフィティー。
高校生活は痛くて暑苦しかったり、家庭には切なさや苦さがあったりで、ニヤニヤしたり、同情したりで、結構引き込まれます。
恋愛のけじめもつけられず、芝居にも真摯に向き合わず、ただ生きているだけの男が、佐々木との思い出の中から、生き方を見出して行く話。
佐々木はキワモノで鬱陶しくも愛すべき真っ直ぐさを持った男。だけども、薄幸で可愛そうな子でもある所が沁みます。ラストのB級らしい、おバカ感も、個人的には大好き。
単館には縁遠かった方に、B級邦画の味とタッチを知って頂くには、最良のサンプル作品やないかと思います。
良かった。とっても。
楽しくて、そしてせつない記憶が蘇る
個人的な記憶として、学校という場は、これまで生きてきた中で最も皆が平等で合ったような気がする、優劣とかあったとしても他と比べるとまだマシ─学びという場から離れ時がたてばたつほどそう思ってしまうわけで、この作品を見て、更にその記憶が鮮明になった。
家庭環境とか見た目なんて関係なく、ともにバカをやったし、立場とか気にせず何者も受け入れたし、家が豪華でもボロくてもなんの気兼ねもなく楽しく時間が流れていた─
どんなにつらい環境や立場であっても、誰にでも楽しい時間は確かにある。それが楽しければ楽しいほど、貴重で同時にせつないものになってしまうのだが、だからこそそこから様々な”物語”が生まれてくるのだろう。
自分の中にある思い出とどうしても照らし合わせてしまい、それとの比較でこの作品を評価してしまうというところは否めない。それが完全に一致することなど皆無なわけで、だからといって拒絶するところでもなく、むしろ遠い記憶を色々と呼び覚ましてくれる良作であった。しかしながら、思い起こされることが良いか悪いのかはそれぞれに委ねられるわけであって、そこからこの映画の良し悪しが決まってくるんだろうなぁと思ってしまう。
何はともあれ、内容も映像も演出演技も真摯で真っ直ぐであったという印象でした。
佐々木を突き動かす渇望に深い共感を覚えるずっしり重い戯曲『ゴリラーマン』
東京国際映画祭のワールドプレミアで鑑賞。
売れない役者の悠二は元カノのユキと同棲を続けながら細々とバイトに勤しむ虚しい日々を送っていた。そんな折高校時代の親友多田と再会、同窓会に佐々木が来ていたことを聞かされる。ありふれた高校生活の中でギラギラと異彩を放っていた佐々木。懐かしい思い出と久しぶりに舞い込んだ舞台『ロング・グッドバイ』練習中の葛藤が悠二の中で交錯する。
時制が複雑に前後する中で高校一の奇人佐々木と演技者として作品と向き合う悠二の胸の内が少しずつ浮き彫りになるドラマ。換気扇の下での喫煙、生乾きのTシャツ、ニンテンドー64やカップ麺、寂れたバッティングセンターにカラオケボックス・・・そこにあるだけで痛々しい背景の中で何者にもなれない二人に突きつけられる厳しい現実とそれに拮抗する慎ましやかな安らぎ。何気ない言葉に突き動かされた人生が壁にぶつかった時に鳴った電話から怒涛のように転がるクライマックスが残す余韻が印象的な作品。
とても惜しいのは佐々木と悠二の関係性とフラッシュバックが戯曲『ロング・グッドバイ』の物語と構成にオーヴァーラップしているというところが解りにくかったこと。そこは演出側の問題ではなくて観客のリテラシーの問題ですけれども。本当はそれこそがこだわりだったと思いますが恐らくあんまり伝わってなかったかなと。あと恐らくですが『君の名は。』にインスパイアされてる部分も多いかと。時制が交錯するところとメチャクチャリアルな背景描写、特に悠二とユキが泊まる旅館の一室はモロにそれじゃないかと思います。あと佐々木達のいる放課後の空気感は『ゴリラーマン』にも通底していると思いました。
個人的には佐々木を演じた細川岳の演技が印象的。舞台挨拶で壇上に上がった時に誰だか判らなかったくらい別人の好青年だったので驚きました。あとはユキを演じた萩原みのり、最後に語る優しさと残酷さを湛えた台詞は胸に突き刺さりました。ちなみにKing Gnuの井口理がカメオ出演ながらリアルな演技を添えていることも付け加えておきます。
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