劇場公開日 2020年11月27日

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「佐々木! 佐々木! 佐々木! 佐々木! オッ! オッ! オッ! オッ!」佐々木、イン、マイマイン 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0佐々木! 佐々木! 佐々木! 佐々木! オッ! オッ! オッ! オッ!

2020年12月10日
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鑑賞方法:映画館

昔は、一クラスとか一学年とかまでは言わないまでも、学校に一人くらいはこういう破天荒がいた。恥とか外聞とか体裁とか、そういう他人の評価を屁とも思わない奴。いや、違うな。そういう感覚がない奴と言った方がいいか。周りの同級生はもてはやして茶化して騒ぐ。楽しいのよ、そういうの。自分にはできない"馬鹿"を喜んでやってくれるんだから。
で、そいつ、佐々木は、格言ぽいことをさらりと言う。「できるからやるんじゃないだろ。できないからやるんだろ」とか。そういう一本筋を通しているとこが、信頼につながるんだよなあ。すぐ裸になるような奴なのに。
でも、人生を共にするほどの友達ではなかった。いつの間にか疎遠になった。そしてある時、そいつの消息を聞き、懐かしい楽しかった思い出が、なんだかしょっぱい思い出となって甦る。なんてことない話かも知れない。だけど、そのしょっぱい感情を、この映画は見事に伝えてくる。まるで僕にも佐々木という同級生がいたかのような錯覚とともに。

あ。ふと思い出した。僕にも新ちゃんっていう同級生がいた。事故で亡くなった。これが自死の場合だと感覚が違う。僕になにかできなかったか、と大なり小なりの負い目を感じてしまうところだが、事故の場合はこちらの努力外の悲劇だ。だから、受け入れがたいことだとは言え、素直にそのことを悲しめる。そして、在りし日の彼の姿を思い浮かべる。映画の後だから、振り向いた彼も佐々木と同じことを言うのよ、「今日はどんな世界だった?」と。すると思うんだよね、今自分は彼が生きたかった未来を、これからも生きていくんだな、って。

栗太郎