劇場公開日 2020年10月16日

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「法を守り人を見捨てるか、法を破り人を守るか」薬の神じゃない! 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0法を守り人を見捨てるか、法を破り人を守るか

2020年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

法を守ることが正義か、法を破ってでも人を救うのか正義か。主人公は金のために白血病の薬の密輸に手を染める。彼には義侠心も正義感もなかった。金のためだけに始めた事業だが、正規ルートでは高くて変えない薬を求めて、白血病の患者が殺到。期せずして主人公は救世主となってしまう。
警察の捜査の手が伸び、事業をストップせざるを得なくなった時、患者たちに死の危険が迫る。国は貧乏人の命を救わない。救えるのは主人公のような犯罪者だった。彼は確かに犯罪者だが、本当の意味で公共心を持った男と言える。法を守り人を守らない国に公共心はあるだろうかとこの映画は問いかける。法の奴隷では人間とは言えない。自分の頭で考え、時には法を破り人を守れる人間こそ、真の成熟した人間である。
手に汗握る展開で一流の娯楽映画であり、社会への深淵な問いかけももった作品。素晴らしい傑作。

杉本穂高