「ポルシェが欲しい♪」ジャニス・ジョプリン kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ポルシェが欲しい♪
伝記ものなのかドキュメンタリーなのかといった予備知識を全く持たず、彼女の名前だけで映画館へ・・・特別料金だって気にならなかった。問題は主演女優のメアリー・ブリジット・デイビスがジャニスそっくりに歌ってるかだけだろう。と、ワクワク。
これは新しい!全くのコンサート形式でデイビス演ずるジャニス・ジョプリンが過去の経歴や本音を語りながら、代表曲を歌いまくる。さらに彼女が影響を受けたミュージシャンであるアレサ・フランクリン、エタ・ジェイムズ、オデッタ、ニーナ・シモン、ベッシー・スミスなどに扮した女優たちも歌う、歌う。
コンサート形式をブロードウェイでミュージカル化した作品は今年公開された『アメリカン・ユートピア』もあったけど、亡くなっている歌手をあたかも本人であるかのように錯覚させる手法は見事。語りにおいても「真実を伝える」と言ってるとおり、家族や恋愛観や音楽についてもリアルすぎるほどだ。
中学生の頃にいとこから借りたジャニス・ジョプリンのレコードが初めての出会い。ハスキーで重々しく、さらにブレスの使い方も独特なジャニスに衝撃を受けたことを覚えている。比較してはないけど、完コピと言えるほどデイビスが歌っていたように感じた。
ブルースとは何?「AとBの二つの音があれば理解できる」と言う彼女。そうか、ブルーノート・スケールを使いさえすればブルースになるんじゃないんだ・・・と、ちょっと目から鱗。スケールで言えば、ジャニスの曲はマイナーブルースが多いこともわかった。
スタンダード曲の「サマータイム」。聴いたことはあったのに、まさかスタンダード曲と一緒だったとは思っていなかった。そして「ボール・アンド・チェインズ」など知ってる曲も多数。圧巻はアレサ・フランクリンとのデュエットだ。まさしく夢の競演。もう感動して胸いっぱいになるところだけど、『リスペクト』のジェニファー・ハドソンを観てしまってるだけに今一つ。それよりも他のメンバーたちが歌う「アイ・シャル・ビー・リリースト」の方が感動的だった。
曲の間に語りをいっぱい入れているのだけど、最後はやっぱり泣かされてしまった。ヘロインの過剰摂取で夭逝したジャニス。天国までロックンロールするぜ!みたいな歌詞がとにかく彼女そのものを表現していた。“27クラブ”という言葉まで生み出されるほど、若くして亡くなるミュージシャンたち。人そのものは尊敬できないかもしれないけど、多くの人に感動を与えてくれた。ソウルを観客に与えすぎたために自分に残らなかった・・・だけど、ジャニスの影響を受けた女性ミュージシャンがいっぱいいるよ!うぅ・・・