劇場公開日 2021年3月5日

「とりあえず文句なし!」キンキーブーツ Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0とりあえず文句なし!

2021年3月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

先に映画で予習してから鑑賞。
映画の方が先に作られたこともあるが、観客もストーリーは十分承知の上で、ミュージカルとパフォーマンスを楽しむ作品だと思う。
また、「ノーサンプトン」というイギリスの街と人々の雰囲気や、ベースとなるストーリーは、この舞台作品だけでは分かりづらい。

逆に、この舞台の方が、映画よりも豊かな内容を持っているシーンもあった。
サイモン(ローラ)とダンの腕相撲がボクシングになったり、チャーリーとサイモンが“父親の期待”に応えられないと嘆いたり、ローレンが下品に演じて笑いをとる場面などである。
サイモン(ローラ)役の俳優はスゴかった。けっこうキーの高い歌を歌うし、“超”ハイヒールを履いて踊って、時にユーモラスに、時にシリアスに演じている。

「松竹ブロードウェイシネマ」はいくつか観ているが、これほどカメラが動き回るのは初めてではないだろうか。
迫力があって、とても分かりやすい反面、舞台ならではの“様式美”を感じることは難しく、もう少し抑えたカメラワークにして欲しかった。

「シンディ・ローパーが音楽」ということだが、確かに、80年代を感じさせる曲やアレンジがあった。
しかし、はっきりクレジットされていないだけで、あらゆるタイプの音楽が、ゴチャ混ぜになって詰め込まれている。
アレンジを除いても、シンディ・ローパーだけで作ったとは思えない。
もう少し“色”を付ける、すなわち、様式を統一して欲しかった。

押して押して押しまくるタイプのミュージカルであるが、とりあえず文句なく、一気に2時間のあいだ楽しむことができた。
ただ、最後のミラノのショーのシーンは、この舞台は、やや物足りない。映画の方がハラハラさせるし、音楽も含めて、ダントツでカッコ良い。
だから、両方観て損はなかったし、相乗効果でより楽しめた。

Imperator