「つまらない」ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 田中さんの映画レビュー(感想・評価)
つまらない
数年前に原作を読んだことがあり、この前ようやくネトフリに加入したので配信終了ギリギリで観ました。今はもう原作の詳しい内容は覚えていないのですが、面白かった記憶があり、原作者である中山七里さんの犬養シリーズはこれ以外にも読んでいてどれも面白かったので期待を込めつつ観ました。
結果……思ってた数倍つまらなかったです。キャストの方々の演技はどれも良かったです。
ですが他のレビューでも言われている通りテンポが悪いし、「え、なんでそうなるの?」ってなることもしばしば。なんで娘が目を覚ますと同時に勝手にタブレットの電源がついてドクター・デスのホームページが表示されるんだ、とか。
とにかくご都合主義の連続で、こういう風にストーリーを進めたいんだろうなっていう制作側の魂胆が見えるような展開が続きます。
原作では安楽死の是非について問うような内容で、映画でもそれ自体は変わりませんでした。中山七里さんの作風はだいたいこんな感じで、社会問題をテーマにして作品を書かれていて面白いんです。
ただ、この「ドクター・デス」は最終的にただの快楽殺人者でした。最初は安楽死させられる側からも感謝されていたりして、どちらを取るべきか観ながら迷っていました。
しかしラストではただ単に私怨、自らの思惑のために人を殺したいだけ、その手段が薬物による安楽死になっていました。本当に人のためにするのなら、例え憎き刑事相手でも、一度は安楽死を望んだ人間でも、拒否されれば辞めるのがポリシーじゃないの?と。
自分の安楽死を罵られたから娘に良からぬことを吹き込んで思考の誘導をして殺してやる!なんて、ただヘイトが向くまるっきり悪役でしかない。本来はそうじゃないから、見る側の価値観が揺らいで面白かったはずなのに。
中山七里さんは「どんでん返しの帝王」という二つ名がつくくらい、毎回ミスリードからの衝撃のラストが気持ちいい作家なのですが、この映画のミスリードはしょぼかったですね。原作はもっと面白い展開だったはずなんだけどな…。
数年ぶりに原作を読み返したくなる映画でした。