「物理法則は無視するのに3作目との整合性には拘るバカーチェイス満載のバカシリーズ9作目」ワイルド・スピード ジェットブレイク よねさんの映画レビュー(感想・評価)
物理法則は無視するのに3作目との整合性には拘るバカーチェイス満載のバカシリーズ9作目
一連の稼業から足を洗ったドムはレティと息子のブライアンの3人で静かに牧場で暮らしていたが、ある日かつての同志ローマン達が訪れる。ミスター・ノーバディが搭乗していた輸送機が何者かによって襲撃され墜落、輸送中であった機密装置“アリエス”のパーツを回収する任務を請けたローマン達はドミニクとレティを誘いに来たのだった。すっかり乗り気のレティに対して動向を躊躇するドム。翌朝ドムとブライアンを残して牧場を去るローマン達。残ったドムはローマン達が持参した動画に十字架らしきものを見つける。それを持っているはずの男はただ一人、ドムの弟ジェイコブだった。
そもそも家電泥棒の話だったはずのこのシリーズ、9作目になると冒頭から意味不明。国家機密の奪還作戦を得体の知れないフリーランスの窃盗集団に外注するって無頓着にも程があるだろ?とか思いますが、そんな枝葉末節のテキトーさも含めて楽しむのが同シリーズ鑑賞の流儀。正直ストーリーなんてアクションとアクションの隙間を埋める緩衝材程度の意味しかありません。ということで色んな“へぇ“が詰まっていて、一番のそれは3作目で死んだはずのハンが生きていたというサプライズ。それがOKならもうなんでもいいじゃんとでも思ったのか、勢いで本来ほぼスピンオフだった3作目の主人公ショーンと相方のトゥインキーとアールまでが復活。思えばかなり純粋なカーキチ映画に近かった3作目でドリフトのテクニックなりカーチューニングなりを追求していた彼らは車にロケットエンジンを搭載するというレトロなバカテクノロジー開発に没頭していたというバカ設定をブチ込みますが、正直3作目を覚えてる人ってそんなにいないと思うんですけど、この辺は久しぶりに監督に復帰したジャスティン・リンの執念が滲んでいるような気がしました。
やはりジャスティン・リンの復帰の影響が色濃く出ていて、とにかく物理法則も都合よく無視する軽薄で軽快に物語は進行、超強力磁石とかのド派手なガジェットも使った壮大なバカーチェイスの末に宇宙に到達した一味に惜しみない拍手を送りました。
正直観終わった後にはもう何にも覚えてないくらいに空っぽな映画ですが、それでもジャスティン・リンは物語の整合性を取ることに拘っていて、エンドロール後にどうしても納得いかない3作目との矛盾に決着をつけようという意気込みを見せていますが、正直誰もそんなところ気にしてないと思います。