劇場公開日 2020年9月11日

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「過去と現在を絆ぐ! 手紙にしたためられた初恋の人を懐う作品」チィファの手紙 美紅さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0過去と現在を絆ぐ! 手紙にしたためられた初恋の人を懐う作品

2023年10月9日
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もうひとつのラストレター、岩井俊二監督が
描きたかった世界観が中国の郷愁な街並みと
共に、再現されたストーリーでした。

亡くなった姉チーナンの代わりに結婚式に招待された
妹のチィファ。

式場で突然スピーチをすることになり
ドギマギしたチィファが、姉と間違えられていても姉が亡くなったことを話すこと
切り出すことが出来なかったときのチィファの心境。

学生時代に好きだった先輩、チャンに再会したときの
淡い色に染まるチィファの感情。

式場を後にして帰ろうとしたチィファが
姉では無いことに気が付いていたチャンが
チィファに姉のチーナンを重ねて見る場面。

姉のふりをしてチャンと文通をするチィファだったけれど、「手紙」に手書きで綴られた
文章は何通も書いていくうちに、いつしか
自分自身の恋と好きな気持ちが浮かんでくる
ように見えました。

学生時代にチャンに頼まれた
ラブレターを姉のチーナンに渡せなかった
ときの刹那な感情が込み上げてくるチィファ。

回想シーンの先輩のチャンに恋するチィファは、素朴ななかに繊細さがあるダイヤの原石のような輝きを放っていました。

心を病んで亡くなった姉のチーナン。

チーナンたちを小説の本にしたチャンの
いつまでも恋い慕う気持ちが伝わってきました。

本を手にして読んだ現在の子どもたち。
ボルゾイの犬と散歩して歩く娘たちを
見て、亡くなったチーナンの面影を感じて
ハッとするチャンの姿。

時を超えて亡くなった人を偲ぶ
手書きの文通が初恋の思い出を昇華していく
ラブ・ストーリーでした。

美紅