「〝不幸せ〟の中の〝幸せ〟」キネマの神様 とけいさんの映画レビュー(感想・評価)
〝不幸せ〟の中の〝幸せ〟
本日観てきました。
あまり文面を考えず、感じたこと思ったことを書いてゆきたいと思います。
現代劇の初めの方を観た時、「この映画、大丈夫かな」、と正直思いました。
序盤を観た時、あまり見慣れない、タイミングを取り合うお芝居みたいに感じてしまったところがありました。
また、主人公の設定が、家族や借金のことよりも、生き甲斐としてギャンブルにはまっていたりなど、共感しづらいところがありました。
しかし、回想劇に入った時、「これをやりたかった」と感じるような、「東京物語」へのオマージュと共に、若返った主人公と共に映画が瑞々しく(語彙力なくてすみません)なったように感じます。
それから、あくまでリアリティを追求し過ぎずに、撮影所の日々を描かれているのを観て、これは現代劇を通して映したい、山田洋次監督の文脈なのだと思いました。
現代劇と回想劇を入れ混ぜながら悲喜劇を通して、なぜ人が〝不幸せ〟と分かっていても選ぶ未来があるのか、が描かれており、それを楽しんで鑑賞しました。
それは、監督の「男はつらいよ」シリーズでも描かれてきた、「フラれる」ことを選ぶ寅さんの生き方と通じる、〝不幸せ〟の中の〝幸せ〟に通じるものを感じられました。
観ていて驚いたのは、その中でも、ラグビーを皆が観ていた頃から現代のコロナ禍まで、映画全体を社会の中の現代劇として向き合っている監督の意志を感じたところです。
エッジを感じました。
また俳優さんそれぞれが、息づいている人物を演じることが、現代というものを照らし合わせて考えることに繋がっていると感じました。
リリー・フランキーさん演じる出水監督は、特に魅力的で、かっこよかったです。
主人公とその孫が協力して書いたシナリオが、木戸賞の最優秀賞を取る場面は、ファンタジックではあり、ハッピーエンドへ向かうきっかけにも感じ、大事なところとは思うのですが、例え、賞を取らなくても、メッセージ性はあったように思います。
そこは少し、キャプラの「素晴らしき哉、人生!」のオマージュ的な要素かと感じました。
本作を、天国の志村けんさんはニコニコして観ているのではないかと思います。
観てよかった、勉強に何かなったような、そんな気がした映画でした。