はちどり(2018)のレビュー・感想・評価
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印象的なトランポリン、男の涙、返事をしない母
1994年の韓国を舞台にした、14歳の少女の痛みを伴う青春を描いた作品だ。兄に暴力を振るわれ、父は家父長的な主人として尊大にふるまう。しかし、家族愛がないわけではない。主人公の入院の時には本気で涙を流したりもする。家族の中の男二人が唐突に泣き出すシーンがとても印象的だ。泣いた理由が明確に示されないのだ。
その他、トランポリンのシーンがすごく印象に残った。トランポリンで飛び跳ねてはしゃぐ主人公、しかし、そのトランポリンは誤って飛び出さないように囲われていて、とても狭い。抑圧的な檻の中でしかはしゃぐことができない閉塞感と、それでも飛び跳ねたい躍動感が同時に表現されているような、そんな重層的なシーンだった。
この映画には、あえて答えが示されないシーンが随所にある。主人公が外で母を見つけた時に声をかけるが、何度呼びかけても母は応答しない。よくわからないものにあふれた作品なのに、不思議なくらい「意味不明」とは感じさせない作品だ。それはきっと、彼女の鬱屈が私たちの鬱屈だと感じられるからだろう。キム・ボラ監督のリアリズムは非常に高いレベルにある。
思春期の少女と90年代韓国
ほとんど何の情報も入れないまま、主人公の中学生の顔がアップになったチラシのデザインになんとなく惹かれて観たが、非常に興味深く、かつ面白かった。本作は中学生が主人公なので青春映画というよりも思春期映画、あるいは少女映画と言ったほうが適切だろう。高校生を描いたいわゆる青春映画というのはたくさんあるし、小学生を描いた子供映画というか児童映画というのもわりとあるが、中学生を描いた映画というのは意外に少ない。1981年生まれでこれが初監督だという女性監督キム・ボラ自身がそれを意識して女子中学生の映画を撮ったと語っている。
臨床心理学者の故・河合隼雄が、子供から大人に変わりゆく思春期の内面では自分自身でも言語化できないような凄まじい変化が起きていて、特に思春期の少女の内面は男性にはほとんど理解不可能に近いと書いていたが、キム・ボラ監督はそれを見事に描き出している。僕は男なんで女性特有の感覚に若干違和感を感じるというかしっくり来ないというか馴染みきれないところも少しあったし、作風がかなり淡々としてるので中盤で少し眠くなるところもあったんだが、それを差し引いてもとても良い映画だった。主演のパク・ジフや女性講師役のキム・セビョクをはじめとする役者陣もみな素晴らしい。
映画に描かれる韓国の1994年という時代の空気もとても興味深かった。民主化運動の末に軍事政権が終わり文民政府の時代となった90年代だが、政治体制が変わっても社会風俗や生活文化は一夜にしては変わらない。家庭には強い家父長制が残り、また男尊女卑文化も根強く、学歴主義と相まって男児優先文化が家庭を、そして社会を支配していたことがよくわかった。それでいて誰かを悪者にしたりはせず、父親や兄もまたそのような文化のある種の犠牲者として描いているのも興味深い。
子供から大人へと変わろうとする少女と、新たな国へと生まれ変わろうとする韓国の歪みと矛盾と苦しみが二重映しに描かれているのも監督の意図通りだったようで、韓国映画の幅広い底力を見せつけられた。
まるで一人の少女を追いかけるドキュメンタリー
透明感
なんかとても不思議な体験
胸が締め付けられる懐かしさ
静で丁寧・・
マイルストーン
空気を感じる。
14歳の女の子が見てる世界ってどんなだろう?
と思って見てましたが、
抑えた色彩、静けさと騒々しさ、
窓から入る風や食卓の匂いに、
少女の心の繊細さと動きを感じられて、
もうすぐ14歳になる娘に、
今までのように雑に接してはならないなと思いました。
父親目線で観るとそんな感じでしたが、
さて自分の14歳はと考えると
中学、高校生の頃、普通コンプレックスというのが
あって周りの同級生に嫉妬し憧れ、
なんでこんな普通の人生なのだろう?と
思ってたけど、
この映画を観てると、そんな普通の6年間も2時間に
編集すると、いやいやお前もドラマチックだったん
じゃない?と自分の目で世界を見てたんじゃない?
と思えました。
静かな映画だったけど、彼女の心で捉えると
ドラマチックなドキドキする映画だったと思います。
3回泣いた
普通の生活が新鮮
韓国というお隣でVFX技術進化のとんでもない国が描くいたって普通で繊細な物語だった。
中学生という自我が確立しない思春期の物語で、誰にでもありそうな日常をここまで美しく韓国映画で表現されると日本の映画とは?と考えてしまうような一作。
どこか河瀬直美を感じるような映像の美しさ、ストーリーだったので調べると女性監督なんですね。
友達との明るいシーン、家族との暗いシーンのコントラストも良かった。
女性監督が描く女子中学生のリアルを気持ち悪いほど感じる本作で、主演のパクジフの表情が感情に訴えて来る。
加えて韓国の一般庶民の生活や兄弟や家族の苦悩、これまで接点がないと思っていた韓国の生活とリンクし、素直に感情移入できたのだと思う。
一瞬グレたりするところや、死と向き合うようなところ、恋するところ。そういう過程を経て自我は確立していくのだろうな。と再認識させられた。
母を呼んでも返事がないシーンや階段を降りてまた昇ってみたりするシーンなど、見ていてわからないシーンも多いけれど、中学生の頃もそうだったように、わからない、と思わせるシーンを印象付けるところも心地よかったのかもしれないな。
人によるかなあ
ずっと観ていられる、観ていたい
ポケベルが懐かしい
思春期の少女
何気ない日常だったりするが
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