「世界を変えるのではなく自分を変える」裏アカ Don-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
世界を変えるのではなく自分を変える
マチコ(瀧内公美)は失敗したように見えるけど、ラストはスマホを捨てて画面の左から右に走っていたし、これから新しい自分になりそうな予感がする。
ゆーとは失敗していない。
では、マチコの失敗の原因を考えてみたい。
マチコは裏アカMarchで人気になるまでは良かったかもしれない。「1回だけ」だとしても男と会うことにはリスクが伴う。マチコは何かを期待していたから会ったし、ゆーとに何かを期待して再度会うことにした。会った男に殺される可能性も有るし、妊娠したり病気になるリスクも有ることは承知で、きっと、それよりもメリットがあるような氣がしたのだろう。今作ではマチコのファン(アイコンがリラックマ)が、PCに詳しくてマチコがMarchであることを突き止め公開し、裸を曝け出されたマチコは馬鹿正直に心までも皆の前で曝け出してしまった。
失敗の原因は何かと考えていたが、もしかしたら失敗ではなくて、これで良かったのかもしれない。マチコはファッション関係という人間の裸を覆い隠す仕事をしている裏で、裸で人気を獲得していたわけだ。
「何も無い」のではなく、人が憧れても真似してもなかなか手に入らない素晴らしいものを既に持っているのだ。
ゆーとは失敗したことが無いらしい。きっとこれからも彼なら、何が起こってもそう思って生きてゆくだろう。
ラストで登場する、ゆーとの結婚相手と思われる女性、とても可愛らしい。ゆーとも裏アカを消したので、彼にとっても良い方向に進む氣がする。
勝ち負けの判定も、失敗か成功か決めるのも、幸福か不幸かも考えかた次第、価値観というものは誰が決めても良いし自分で決めても良い。
マチコは失敗したように見えるけど、失敗ではなかった。今まで狙っていた的は、狙うべき的ではなかったのだ。的に当たらなくて当然だったのだ。
今作は、一見セックスばかりでエロい作品のように見えるが、服で着飾り嘘で人と繋がる虚しい世界との対比であり、とんでもなく深く核心に迫るメッセージがある。